事件の概要
某有名インターネット会社は2021年、自社の第9類商標がEUにおいて第28類の「玩具」などを指定商品として冒認出願されていることを発見した。
上述の商標に関して、同某有名インターネット会社は異議申立手続きを集佳に依頼した。本事件で、当事務所は、EU「商標法」第8条(1)(b)の誤認混同および第8条(5)の著名商標に関する条項に基づき、本商標は異議申立人の第9類商品および第41類の役務における同一の先行商標と同一または類似の役務の類似商標を構成し、容易に消費者の混同と誤認を招き、かつ本登録出願は異議申立人の先行商標の名声を不当に利用するもので、登録を許可すべきでない旨を主張した。
審理の結果、欧州連合知的財産庁は前述の異議申立理由を支持しなかった。集佳は続けて同クライアントの依頼を受け、異議申立却下の決定に対する不服申立を請求した。不服申立の請求において、集佳の弁護士は他事務所の弁護士と意見交換を重ね、先行事例を検索し、EUの使用証拠を収集し整理して、多くの同業が第9類・第41類と第28類を同時に取り扱っている商標登録出願文書や使用情報などを提供して、第9類・第41類の関連ソフトウェア、役務と第28類の玩具に密接な関連性があることを主張するとともに、大量のEUにおける使用証拠を追加して同社の名声の享受を証明した。
不服申立に対する審理の結果、欧州連合知的財産庁審査委員会は、第28類「玩具」などの商品と第9類の関連商品は低度の類似を構成していると認めた。また、不服申立中に追加提出した証拠をふまえ、審査官は、当該クライアントの商標はすでに比較的高い名声を積み上げ、被異議申立商標の出願は先行商標の名声に便乗する「ただ乗り」行為を構成することから、すべての指定商品で登録を許可しない考えを示すとともに、被異議申立人に対し、異議申立に関する合理的費用の負担を命じる裁定を下した。
事件の批評・分析
本件は異議申立および異議申立却下の決定に対する不服申立を経て、最終的にクライアントによる第28類のEUにおける商標冒認出願に対する区分を超えた異議申立の成功をサポートした。
本件の第一の課題は、商品の関連性には限界があり、区分を超えた保護が難しい点であった。欧州連合知的財産庁は商品の類似性を判断する際、中国大陸の類似群に従って区分することはせず、主に商品の機能、用途、ターゲットグループ、消費ルート、関連公衆の注意義務などを根拠にするとともに、既存の先行事例を参考にする。
検索の結果、EUの先行事例では第9類と第28類「ゲーム機器」は類似を構成すると認定していたものの、第28類「玩具」とは、いずれの先行事例も類似の認定をしていなかった。前述の不利な要素に基づき、集佳チームは他事務所の弁護士と協力し、有利な事例、証拠、同業種の状況を積極的に収集して整理し、商品が類似するとの主張を支持するよう審査官を説得し、さらには一部商品において第8条(1)(b)の混同誤認に関する条項に対する支持を得ることに成功した。
第二の課題は、著名であることを示す証拠の収集であった。EU「商標法」第8条(5)の著名商標に関する条項の適用には、(i)先行登録商標が関連地域で名声を得ていること、(ii)異議申立のある出願は先行商標と同一または類似であること、(iii)出願標識を使用することで不当に優位に立てること、または先行標識の名声または識別性を損なうこと、(iv)この類の使用に正当な理由がないこと、という条件を満たす必要がある。
本件において、異議申立人の商品はEUでの発売時期が被異議申立商標の出願日よりわずか9か月早いのみで、1年に満たなかった。異議申立却下の決定に対する不服申立の段階において、集佳はクライアントによる大量の使用証拠の追加収集をサポートするとともに、同業種の関連市場に対する論証を行うことで、被異議申立商標には正当な理由がなく、先行商標の識別性および名声を不当に利用し、先行商標の顧客吸引力(the power of attraction)、名声(the reputation)、威信(the prestige)から利益を取得し、「寄生(parasitism)」「ただ乗り(free-riding)」行為を構成している旨を主張した。最終的に、第9類「コンピューターソフトウェア(記録済み)」などの商品で著名の認定に成功し、これにより、第28類は類似を構成しない商品項目であることに対する異議申立に成功した。
本件は、海外商標の冒認出願を企業が区分を超えて取り締まること、また商標の使用期間が短い場合の、使用証拠収集による著名商標条項の主張において参考となる事件である。