事件の概要
北京古北水鎮旅游有限公司(以下、「古北水鎮公司」という)は2010年7月16日に北京市密雲区で設立登記が行われ、古北水鎮景区(景観区)を専門に運営するために設立された。2014年から2016年までの間に毎年延べ100万人の観光客がこの景区を訪れ、総観光収入は1億元を超える。北京小壕科技有限公司(以下、「小壕公司」という)は2014年2月12日に北京市密雲区で設立登記が行われ、設立時の営業範囲には商標の譲渡と代理サービスなどが含まれていたが、その後変更登記時にこのサービスが外された。小壕公司は第33類酒類商品、第25類服装などの商品について第14073131号、第14073132号「古北水鎮」商標(以下、「係争商標」という)の登録を出願し、かつ相次いで古北水鎮公司に権利侵害警告書を発送し、工商行政管理部門に商標権侵害として苦情を提出し、古北水鎮公司に対して酒類商品の包装上での「古北水鎮」商標の使用停止などを要求した。小壕公司が登録した係争商標はその後古北水鎮公司の先行商号上の権益を損ねるなどの理由で法院の発効済み判決により無効を宣告すべきであると認定された。古北水鎮公司は、小壕公司が古北水鎮公司の企業商号である「古北水鎮」および未登録商標の知名度が明らかに分かっているにもかかわらず、依然として係争行為を実施したことは、不正競争を構成すると判断し、法院に訴訟を提起し、小壕公司にその経済的損失および合理的支出の計50万元の賠償などを命じる判決を請求した。
一審法院の判断は次のとおりである。2014年2月以前に、「古北水鎮」は観光・飲食などのサービスを提供する古北水鎮公司の企業商号および酒類商品上で使用する商標として、すでに関連の公衆の中では一定の知名度があり、古北水鎮公司と相応の関連性を形成することができる。同じ北京市密雲区に位置し、かつ後に設立された事業者として、小壕公司は当然古北水鎮公司の先行商号である「古北水鎮」上の権益などを尊重し、合理的に回避すべきである。小壕公司が係争商標の登録を出願し、かつ権利侵害警告書を発送し、工商行政管理部門に苦情を提出した行為は古北水鎮公司の合法的権益を損ね、信義誠実の原則に反し、不正競争防止法第2条の規定に違反し、不正競争を構成することから、小壕公司に対して古北水鎮公司の経済的損失28万元および合理的支出3万5,000元の賠償などを命じる判決を下した。小壕公司はこれを不服として控訴した。二審判決では訴えを棄却し、原判決を維持した。
典型事例の意義
本件は悪意の商標登録および苦情に対して不正競争を構成することが認定された典型事例である。本件では小壕公司の主観的過失、冒認出願が行われた商標が無効宣告を受けたことなどの事実を踏まえて侵害被疑行為が不正競争を構成することが認定され、商標登録および使用行為の規範化、社会全体の正確な商標登録および使用に対する意識の向上、ブランドの信用確立の重視、良好なビジネス環境の整備の支援にとって重要な意義を有する。
(事例出典:北京市高級人民法院公式WeChat)