集佳が代理人を務めた「DR.MARTENS」が初めて司法により馳名商標認定、「馬丁靴」がフットウェア商品の一般的な名称でなくなる

2024-08-20

 事件の概要

 原告の埃瓦国際有限公司(以下、「埃瓦公司」または「原告」という)は、国際登録第584207号などの「Dr.Martens」に関する一連の商標の全世界における独占的ライセンスを取得した企業であり、中国において「Dr.Martens(ドクターマーチン)」ブランドシリーズ製品のデザイン、生産、宣伝および販売を一手に手掛けている。1960年代から現在に至るまで、「Dr.Martens」ブランドのフットウェア商品はすでに世界の80以上の国と地域で販売され、世界で最も高い知名度を誇るフットウェアの商標ブランドの一つである。2003年より、中国の新聞・雑誌などの媒体ではすでに「DR.MARTENS」およびその商品の宣伝・報道が行われていた。2007年、「Dr.Martens」ブランドが中国市場に参入し、その販売エリアは全国に広がり、当該ブランドは中国国内において極めて高い知名度を誇っている。

 被告の汕頭某服飾公司の法定代表者の胡某は、2011年7月に出願し、かつ2012年6月に係争商標と同一商品の「服装、靴」を指定商品として第9780715号商標「Dr.mannar」を登録した。被告の汕頭某服飾公司は天猫、淘宝網、1688などの電子商取引プラットフォームでフットウェア商品を販売し、かつ店舗のトップページや商品のリンクページ、包装箱、包装紙などの多くの場所で「馬丁(「馬丁」は「MARTEN」の中国語表記――訳注)」「馬丁靴」「馬丁鞋」「MARTIN」「Dr.Mannar」などの権利侵害標章を使用した。埃瓦公司は前述の被告の行為が商標権侵害を構成することを理由に上海知的財産権法院に提訴した。

 法院の認定

 上海知的財産権法院は審理を経て次のように判断した。原告は権利付与を経て、第G584207号商標「DR.MARTENS」(以下、「係争商標」という)について中国において販売・普及を行い、かつ許諾に基づき民事訴訟を提起する権利を有する。係争商標は長期的な宣伝、使用、普及を経て、国内で極めて高い知名度を誇り、その登録を許可された「フットウェア、服装」商品上で馳名商標(著名商標に相当――訳注)に該当する。被疑侵害商品もフットウェア商品であり、しかも被告の胡某は第9780715号商標「Dr.Mannar」を登録していることから、本件において馳名商標の認定の必要性がある。被告の「Dr.mannar」「Dr.Mannar馬丁鞋」「」「」などの標章は原告の係争商標「Dr.Martens」「馬丁 DR.MARTENS」「」などと文字の構成、読み方、中国語・英語表記の意味がすべて類似しており、汕頭某服飾公司は被疑侵害標章をフットウェア関連商品上で使用し、かつ各オンラインショッピングプラットフォームで販売しており、関連公衆に商品の出所が同じである、またはその出所の間に密接な関係があると容易に思わせることにより、商品の出所に対する混同、誤認が容易に生じる。また、本件において「馬丁靴」という表現が法定または習慣化した一般名称であることが証明可能な証拠もなく、逆に、係争商標に関する各種宣伝・報道において「馬丁靴」が係争商標に対応しまたはそれを指すことを具体的に示すことができ、係争商標との間で一定の対応関係が形成されている。したがって、被告の行為は係争商標に対する権利侵害行為を構成する。

 最終的に、法院は汕頭某服飾公司、胡某に対して権利侵害行為の即刻停止、影響の除去を命じる判決を下し、かつ懲罰的損害賠償を適用し、埃瓦公司の賠償金300万元の訴訟上の請求を全面的に支持した。現在本件は二審が行われている。

 典型事例の意義

 本件は馳名商標を用いて悪意のある登録、および権利侵害行為を懲罰する典型事例であり、市場における「フリーライド」「ブランドの不正利用」などの悪意のある権利侵害行為の抑制に役立つ。

 

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