2016年1月29日、アジアドメイン名紛争処理センター(ADNDRC)の専門家は騰訊控股有限公司が「li ming」を訴えたドメイン名「weixin.com」紛争の仲裁について裁決を下し(HK-1500816号)、「weixin.com」の現在の所有者である「li ming」は紛争対象のドメイン名を告訴人である騰訊控股有限公司に譲渡するよう裁決した。
ドメイン名「weixin.com」は2000年に初めて登録され、最初の登録者は「Hai Shen Yang」で、以後何度も譲渡され、最終的に被告人「li ming」に譲渡された。現在は最初の登録者が「weixin.com」を登録した意図を確認しようがないが、関連のネットワーク資料と仲裁裁定から分かったことは、2011年にはこのウェブサイトで表示されていた中国語名は「威信」であり、2014年4月11日になって「微信」に変更された点である。少なくとも2011年以前は、ドメイン名「weixin.com」はまだなく、「微信」と必然的、かつ唯一の関連づけを行うこともできない。
2011年1月21日、騰訊公司の微信(WeChat)APPはインテリジェント端末としてインスタント・メッセンジャー・サービスの無料アプリケーションを提供することで、業界上位に躍り出た。ユーザー目線の設計により、微信は急速に人々のコミュニケーションというライフスタイルにまでなり、圧倒的多数のスマートフォン利用者の日常生活に深く浸透し、2015年第3四半期までにアクティブ・アカウントは6億5,000万を超えた。したがって「微信」の2文字の知名度と価値も急速に上昇し、商標あるいはドメイン名の投機家が狙うターゲットとなった。
この時の「weixin.com」というドメイン名は「微信」の知名度が上がるとともに必然的に価値が倍増した。2015年4〜7月、同ドメイン名は続けて何度も譲渡された。以前のドメイン名所有者は騰訊公司に1,000万元のドメイン名譲渡料を要求したという。騰訊公司が決める前、2015年4月に「weixin.com」は売られ、取引価格は3,000万元だった。業界内の「weixin.com」ドメイン名に対する評価額は1億元という驚くべきものだった(ネット情報であり、確認しようがない)。このような不思議な価値の倍倍増は、完全に「微信」自身の価値によるものであって、「weixin.com」固有の価値ではない。
関連のネットワーク資料および仲裁裁定から分かるように、巨資を投じてドメイン名「weixin.com」を手に入れた所有者はドメイン名を購入した後、従事している業務はまさに騰訊の「微信」と密接な関係のある業務である。現在「weixin.com」にログオンすると、サイト名が「微信開発者プラットフォーム」であることが分かり、主に微信開発掲示板を運営して、微信開発に関するQ&A、公式アカウント開発などのQ&Aを提供するほか、情報データ関係のニュースもある。サイトのトップページ下方には比較的目立つように「本ウェブサイトは騰訊・微信とはいかなる関係もなく、騰訊・微信のオフィシャルサイトではない」との声明があり、また「weixin.comは専門の第三者による微信開発者プラットフォームであり、生態のために開設した」と注記されている。だが、こうした「非公式」、「騰訊・微信のオフィシャルサイトではない」①などの声明は騰訊公司がアジアドメイン名紛争処理センターに訴えた後に加えられたものである。提訴するまでは、このウェブサイトは「ペンギンのアイコン」、「QQ」、「微信」およびアイコンを複数個所に使用していた。
アジアドメイン名紛争処理センターの専門家チームは「統一ドメイン名紛争処理方針」に基づいて紛争中のドメイン名「weixin.com」を騰訊公司に移転すると裁決した。
「weixin.com」のドメイン名所有者は不利な裁決であるとして訴訟を起こし、すでに海淀法院は「微信」ドメイン名所有権帰属紛争を受理したが、裁判の結果が仲裁の結果と一致するかどうか、仲裁裁定が最終的に司法審査に認められるかどうか、その結果に注目したい。
コメント:
現在、国内の商標行政と司法は実践過程にあり、商標登録と使用の悪意に対する判断は商標を最初に登録した時期になお固執しているようである。我々は、以前に何度も同じような権利侵害案件に遭遇したことがある。例えば、権利侵害者が現在の有名ブランドに似ていて、長年使用されていない「古い商標」を探し出し、譲り受けると馳名商標(日本の著名商標にあたる)、あるいは知名商標と同じ、または類似の商品の生産に直接利用し不当な利益を手に入れようとするなど。さらにしたたかな権利侵害者の場合、譲り受けた後に現在の馳名商標、または有名ブランドにさらに類似する新商標として登録して使用する。一方、有名ブランドの権利者は逆に、当該商標が登録された時の悪意を証明しにくく、これら「古い商標」と「新規登録」を無効とすることが難しいために、「古い商標」の所有者が何の懸念もなく市場をかき乱し、消費者に誤解を与えるのを、なすすべもなく見ているほかない(「滙源」、「奥普」、「栄華」などのブランドの真の権利者と消費者は大きな損害を被った)。しかし、司法は「正義の力が強くなれば、それだけ悪の勢力も強くなる」といった勝手な振る舞いを眺めているべきではない。商標登録と使用の問題では、ドメイン名紛争中の「第三者への譲渡を新規登録と見なす」という解釈は、我々にとって有益な参考および示唆となる。
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