2015年の「双十一(独身の日)」(11月11日)期間中、中国国内のeコマース大手2社――アリババグループと北京京東参佰陸拾度電子商務有限公司(以下、「京東公司」)の間の競争が白熱化している。京東公司はまず国家工商行政管理総局に、アリババグループが『独身の日』の販促活動において、売り手に「二者択一 」を迫り、電子商取引市場の秩序を乱したとの内容の通報を実名で行った。その後、北京市海淀区人民法院に訴訟を提起し、浙江天猫網絡有限公司(以下、「天猫公司」)が掲載した広告の中で、「その日にお届け、その日に使える 」、「気軽にお買い物、その日にお届け 」と謳っており、その行為は虚偽宣伝による不正競争行為に該当すると主張した。
2015年10月末、京東公司は自社の微信(Wechat)パブリックアカウント(京東黒板報)を通じて、某企業が京東公司の「独身の日」販促イベントの会場資源に関する申請を取り消すよう求めたと公表した。これは某eコマースプラットフォームが当該某企業に対して他のeコマースプラットフォームでイベントに参加しないよう求めたことが原因であった。京東公司は直ちに対応を行い、当該企業のネットショップを閉鎖し、今後二度と提携しないことを発表した。その後、当該企業は微博(ミニブログ)において、「京東公司が粗暴にネットショップを閉鎖した」と指摘し、京東公司とは今後提携しないと述べた。
この事件を経て、京東公司は怒りの矛先をアリババグループに向けた。2015年11月3日、京東公司は自社の微信パブリックアカウントを通じてメッセージを配信し、アリババグループがeコマース市場の秩序を乱したことを国家工商行政管理総局に実名で通報したと発表した。京東公司は、「アリババグループは売り手に対し、『天猫の『独身の日』のメイン会場でのイベントに参加した場合、他のeコマースプラットフォームの『独身の日』のメイン会場でのイベントに参加してはならない。他のプラットフォームとすでに提携の意向に達した場合、その売り手に対して撤退するよう求める。撤退しなければ、トラフィックや資源配分などに関して処罰または制裁を行う』という情報を伝え、売り手が他のeコマースプラットフォームの『独身の日』販促イベントに正常に参加できないようにした」と指摘した上で、こうした行為は正常な市場競争を妨害し、何よりも深刻なのは消費者の利益を害することだと主張した。
一方、アリババグループの関係責任者は京東公司の主張に対し、「アリババグループは『二者択一を迫る』行為をしていない」と反駁した。
また、実名で通報した日と同日、京東公司は北京市海淀区人民法院に訴訟を提起し、アリババグループ傘下の天猫公司、天津猫超電子商務有限公司(以下、「猫超公司」)の「独身の日」期間中の行為は不正競争に該当するとし、次の事項を命じる判決を下すよう求めた。天猫公司、猫超公司に対する虚偽宣伝行為の即時停止、「その日にお届け、その日に使える」、「価格はどの店よりも安く、その日にお届け」、「気軽にお買い物、その日にお届け」といった文句を含むキャッチフレーズの発表、配信を即時停止する▽過去に虚偽宣伝を掲載したことのある新聞紙、ウェブサイト、野外広告の看板に、1か月間、前述のキャッチフレーズが偽りである旨を発表して悪影響を除去する▽天猫公司のウェブサイト(www.tmall.com)と猫超公司のウェブサイト(chaoshi.tmall.com)のホームページの目立つ位置に1か月間、新浪網などのウェブサイトおよび平面媒体の目立つ位置に1週間、それぞれ不正競争について京東公司に対する謝罪文を掲載することにより影響を除去する▽この事件にかかわる一切の合理的費用および訴訟費用を負担する。
業界から「猫と犬との激戦」と揶揄された京東と天猫の戦いはいまだに決着がついていない。
評論:
周知のとおり、アリババグループと京東公司は現在、国内最大のeコマース2社である。ビジネスモデルは若干異なるとはいえ、アリババグループと京東公司の競争は避けられない。ただ、2015年の「独身の日」前夜までは、双方が公の場で争うということはなかった。今回、京東公司が競争の先陣を切ることとなった。
全国で話題が沸騰する「独身の日」には、ネットショッピングの熱波が押し寄せ、アリババグループと京東公司はそのヒートアップに極めて大きな影響を及ぼしている。今回の「猫と犬との激戦」はeコマース大手同士の熾烈な戦いである。ただ、競争はあくまで競争であり、法の順守という最低ラインを双方は心得て然るべきだろう。
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