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No.122 May.28, 2016
 
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故宮
 
目 録
ニュース
中国が商標分野でWIPOとの協力を強化
中国国内の特許の保有件数が100万件を突破
中国の専利譲渡、昨年は11万回超 「2015年中国専利運用状況研究報告」
北京市高級人民法院が現在の知的財産裁判で注意を要する若干の法律問題(著作権およびその他)を整理、公布
注目事件
「瓊瑶氏が于正氏を提訴した事件」で「宮鎖連城」に権利侵害の判決
「星河湾」商標権侵害および不正競争事件
「『鄭58』育成者権事件」で約5,000万元の賠償の判決
 
 
ニュース

 
中国が商標分野でWIPOとの協力を強化

 

  世界知的所有権機関(WIPO)と中国国家工商行政管理総局はこのほど、ジュネーブで協力のさらなる強化に関する了解覚書を締結した。マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録における双方の踏み込んだ協力を促進することが目的である。

  説明によると、ここ数年、中国の商標の国際化レベルが向上を続けており、2015年の中国におけるマドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録の出願件数は2,300件余りで、WIPO加盟国の中で6位である。今後、中国はさらにWIPOと中国の商標登録とマドリッド協定議定書に基づく国際登録との連携のさらなる円滑化について継続的に踏み込んだ業務を実施する予定である。(出所:新華ネット)

  

 
中国国内の特許の保有件数が100万件を突破

 

  国家知識産権局の5月12日の発表によると、2016年4月末の時点で、国家知識産権局が権利を付与し、維持されている有効な特許は計159万4,000件である。そのうち、中国国内の特許の保有件数(香港、マカオ、台湾を含む)は101万9,000件に達して100万件の大台を突破し、全体の63.9%を占めた。中国国内の有効な特許のうち、職務特許が93万1,000件で、91.4%を占め、職務発明以外の特許が8万8,000件で、8.6%を占めた。企業が保有する有効な特許は65万4,000件で、中国国内の有効な特許の64.2%を占めた。(出所:光明日報)

 
 
中国の専利譲渡、昨年は11万回超 「2015年中国専利運用状況研究報告」

 
   

  中国国家知識産権運営横琴金融・国際特色プラットフォームは4月27日、知識産権出版社有限責任公司と共同で「2015年中国専利運用状況研究報告」(以下、「報告」という)を公布した。「報告」によると、専利の運用について、専利の譲渡がなお中国における専利の運用の主な類型であり、2015年は中国における専利の譲渡が11万回を超えた。

  「報告」によると、中国における専利の運用は2015年に急速に発展し、各種運用プラットフォーム、機構および基金の構築、専利の運用活動の回数および関連の専利件数のいずれにおいても、数年前に比べ比較的大きな増加が見られた。そのうち、2015年の専利の運用において最も活発な技術分野が電子データ処理であった。専利の運用の類型から見ると、2015年の専利の譲渡回数が11万回を超え、次に届出が行われた専利許諾および専利質権で、それぞれ1万6,514回および1万998回であった。(出所:中国知的財産権報) 出処:法制晩報)

 
 
北京市高級人民法院が現在の知的財産裁判で注意を要する若干の法律問題(著作権およびその他)を整理、公布

 

  著作権事件

  ――ネットワーク上の著作権事件における「役割分担・協力」による作品提供の認定の問題について。裁判過程において主観および客観の2つの面から認定しなければならず、つまり主観上、被告間または被告と訴外者との間に作品を共同で提供する主観的な意思の連絡があり、かつ前述の主観的な意思の連絡を実現するために客観上、相応の行為を実施したか否かを見なければならない。なぜなら主観的な意思の連絡には安定性が存在し、判決の中で被告間に協力の意向の合意がある、行為間に協力または利益の共有などの密接な関係があるなどの事実に基づいて、主観的な意思の連絡の存在を認定することができるが、特定の技術またはビジネスモデルなどの客観的な需要に基づいて確立された「形式上の協力」と区別しなければならないからである。

  ――画像の著作権の帰属の認定の問題について。先行事件において提訴された権利侵害者が使用した画像が合法的に授権を受けたものであることを証明できず権利侵害が認定され、後続事件においてその権利侵害者がさらに同一画像の著作権者または専用使用権者の身分により原告として訴訟を提起した場合、保存されている証拠に基づいて真摯にかつ慎重に事件の関連の事実を明らかにし、法により当事者に必要な立証指導を行い、保存されている証拠が証明する事実に従って法により判決を下さなければならない。先行事件の有効な判決ですでに明らかにされた事実について、後続事件においてそれを覆すことのできる証拠がある場合、民事訴訟法の関連規定に基づいて法により判決を下す。

  ――映像作品の著作権事件における当事者の追加の問題について。関連規定によると、共同作品の分割使用が不可能である場合、その著作権は各共同エグゼクティブ・プロデューサーが共同で享有し、協議による合意を通じて行使し、合意することができず、さらに正当な理由がない場合は、いかなる一方も他方による譲渡以外の権利の行使を阻止してはならない。ただし、所得、收益はすべての共同エグゼクティブ・プロデューサーに適正に分配しなければならない。映像作品の著作権が多くの権利者に帰属し、かつ権利者の基本状況を明らかにすることができる場合は、すべての権利者を事件当事者としなければならない。権利者の基本状況を明らかにすることが確かに困難である場合は、裁判効率の向上および著作権者の合法的権利のより良い保護の観点から、その中の1名または一部の権利者を事件当事者とすることができるが、判決文の中に「係争作品のその他著作権者は、係争権利侵害行為により発生した経済損失賠償金の分割を本件原告に主張することができる」など一文を加え、訴訟に参加していない著作権者のために相応の権利を残しておかなければならない。訴訟を提起したのが映像作品の専用使用権者であり、かつその専用使用権が共有著作権者の中の1名または一部の者の権利である場合、その授権がその他著作権者に不適正な損害をもたらすことを証明する証拠が存在しない状況において、その専用使用権者の身分を認定することができる。

  その他問題

  ――民事訴訟法司法解釈第25条の理解と適用の問題について。《最高人民法院関於適用〈中華人民共和国民事訴訟法〉的解釈(〈中華人民共和国民事訴訟法〉の適用に関する最高人民法院の解釈)》第25条では、「情報ネットワーク権利侵害行為の実施地には係争権利侵害行為の実施に使用されたコンピューター等の情報機器の所在地が含まれ、権利侵害結果の発生地には被権利侵害者の住所地が含まれる」と規定されている。高級人民法院立件法廷は北京万象博衆系統集成有限公司が廊坊市徳泰開関設備有限公司、浙江淘宝網絡有限公司を提訴した意匠権侵害紛争事件の二審管轄権の異議の決定の中で、「同条規定における『情報ネットワーク権利侵害行為』は特定の意味を有し、主に情報ネットワークを利用して人身の権益、情報ネットワーク配信権などを侵害する行為をいい、その権利侵害対象である、作品、商標、宣伝内容などはしばしばネットワーク環境下に存在し、ダウンロード、リンクなどのネットワーク行為により発生する」と指摘した。したがって、商標権侵害紛争、意匠権侵害紛争については、関連の係争権利侵害行為は上述の規定における「情報ネットワーク権利侵害行為」ではないことから、上述の規定を適用してはならない。もちろん、この問題についてさらに高級人民法院立件法廷との間で踏み込んだ調整、意思疎通を行う必要があり、具体的な規定が設けられるまでは、最初にこの意見に従って処理しなければならない。

  ――基層法院が立件した技術契約事件が審理においてコンピューターソフトウェア事件に該当することが分かった場合の処理の問題について。関連規定によると、コンピューターソフトウェアなどの技術に係る民事および行政一審事件は知識産権法院が管轄する。裁判実務において、コンピューターソフトウェアの開発などに係る契約は通常の場合、技術契約の名称が使用されることにより、これに係る紛争は技術契約紛争として基層法院が立件し、その後基層法院が審理過程において契約が実質的にコンピューターソフトウェア契約であることを発見する事態を招く。このような状況について、事件を受理した基層法院は事件の管轄について意見を提起し、高級人民法院民事第三法廷に順を追って報告し、高級人民法院民事第三法廷が統一的に審査を行い、管轄法院を確定する。審査を経て、確かに名称は技術契約であるが実質的にコンピューターソフトウェア契約であると判断された事件は、知識産権法院に送致されその管轄となる。審査を経てなお技術契約であると判断された事件は、事件を受理した基層法院の知的財産権法廷が引き続き審理を行う。

  ――同一行為について著作権または商標権の侵害を主張しさらに不正競争の構成を主張した場合の処理の問題について。法体系において、通常の場合、反不正当競争法(不正競争防止法)は著作権法、商標法に対して包括的および補足的役割があるとされている。係争行為がすでに著作権または商標権の侵害を構成する行為であると認定されている場合、不正競争防止法第2条などの条項を再度適用して救済することは望ましくない。係争権利侵害行為が多くの行為からなる場合、異なる行為について逐一認定しなければならず、一部の行為が著作権、商標権を侵害し、一部の行為が不正競争を構成する場合、著作権法、商標法および不正競争法を個別に適用して判決を下さなければならない。

  ――国外送達手続きの問題について。現在の国外送達手続きの複雑性および長期性を踏まえ、国外送達手続きを採用して送達し6か月を過ぎても回答が送達されない場合、同時に公示送達の方式を採用して同一の当事者に送達することができる。

  ――行政訴訟における新証拠の採用の問題について。行政訴訟において実体上の公正および手続き上の公正を考慮しなければならない。事件の実質的な処理結果に影響を及ぼす可能性のある証拠、当事者の権利の認定に重大な影響を及ぼす証拠および考慮しなければ当事者のその他の救済の機会がなくなる証拠は、証拠の失権について慎重に認定しなければならない。新証拠の採用により社会公共の利益を害さなければ、具体的な事件の状況に基づいて考慮することができる。

  ――行政訴訟において訴訟に参加すべき第三者が取り消された場合の処理の問題について。商標、専利の権利付与、権利確認に係る行政訴訟において、訴訟に参加すべき第三者が取り消された場合、原則的に行政訴訟法およびその司法解釈ならびに民法通則、会社法などの法律の中の関連規定に基づいて関連の主体を法により追加し訴訟に参加させなければならない。ただし、第一中級人民法院が係争中の事件の処理にあたり実際の困難に直面することを踏まえ、関連の主体の状況を明らかにすることが困難であるまたはその他特殊な状況がある場合、その者を事件当事者としなくてもよいが、取り消された証拠を事後の調査のために記録文書に残しておかなければならない。

  ――法定賠償の適用および賠償基準の統一の問題について。知的財産権の保護によりイノベーションのインセンティブを図る目的に基づいて、権利侵害の損害賠償はその知的財産権の真の市場価値を十分に反映し、実現しなければならない。保護の範囲、強度とイノベーションによる貢献を互いに適応させ、釣り合わせてこそ、真の意味でイノベーションのインセンティブを図り、創造を奨励することができる。権利侵害訴訟において、当事者、代理人が権利者の損失および権利侵害者の利益獲得状況について立証し、損失および利益獲得状況の明確化に努め、損害賠償計算の科学性および合理性を向上させるよう大いに奨励しなければならない。権利者の損失および権利侵害者の利益獲得状況の明確化が確かに困難である場合、法定賠償金額の確定は知的財産権の真の市場価値を十分に反映、実現し、専利などの科学技術成果に係る知的財産権のイノベーションの程度および貢献度、作品の類型、特徴および独創性の程度、商標の顕著性および知名度、権利侵害行為の性質、権利侵害者の事業規模、納税状況および主観的悪性の程度などと適応していなければならない。同時に、裁量的賠償方法の適用を統一し、適正化する。裁量的賠償は法定賠償ではなく、法定賠償限度額の制限を受けない。市全体の各級法院は法定賠償限度額を超えて裁量的賠償を実施するにあたり、権利者の損失または権利侵害者の利益獲得額がすでに明らかに法定賠償限度額を上回っていることを証明する確実かつ十分な証拠がなければならず、関連事件を処理するにあたっても、高級人民法院民事第三法廷に順を追って報告しなければならない。

  ――二審で新たに発生する弁護士費、出張旅費などの費用の処理の問題について。《北京市高級人民法院関於確定著作権侵権損害賠償責任的指導意見(著作権侵害の賠償責任の確定に関する北京市高級人民法院の指導意見)》第12条では、「係争権利侵害行為が訴訟期間もなお継続して行われ、原告が一審法廷の弁論終了前に追加賠償の請求を提起し、相応の証拠を提出した場合、訴訟期間内に拡大した原告の損失も併せて賠償範囲に含めなければならない。二審訴訟期間内に拡大した原告の損失も賠償範囲に含める必要がある場合、二審法院は賠償金額について調停を行わなければならず、調停が成立しない場合は、賠償金額について改めて判決を下し、判決文の中で理由を説明することができる」と規定されている。また、第13条では、「本規定第6条第2項における『適正な支出』には次の内容が含まれる。(1)弁護士費、(2)公証費及びその他調査・証拠収集費、(3)会計監査費、(4)交通、食事、宿泊費、(5)訴訟資料印刷作成費、(6)権利者が権利侵害の制止又は訴訟のために支払ったその他適正な支出。上述の支出の合理性及び必要性について審査を行わなければならない」と規定されている。上述の規定を参考にして、当事者が一審訴訟においてすでに弁護士費、出張旅費などの適正な支出について訴訟請求を提起し、二審期間に新たに追加された上述の費用について賠償金額の追加を請求した場合、民事訴訟法司法解釈第328条の「独立した訴訟請求の追加」の状況には該当せず、裁判官は上述の費用の賠償金額について改めて判決を下し、判決文の中で理由を説明することができる。

  ――判決文の記述書式の簡易化の問題について。知的財産権に係る判決文は事件の具体的状況に基づいて記述を簡易化することができる。ただし、基本的な体裁の統一を保持しなければならず、特に一審判決文では事件の事実の真相およびその証拠、ならびに認定に至った考え方および過程を全面的に明らかにしなければならず、各院は簡易化方式を採用して知的財産権に係る判決文を作成するにあたり、表形式を採用すべきではない。(出所:中国知的財産権ネット)

 
注目事件

 
「瓊瑶氏が于正氏を提訴した事件」で「宮鎖連城」に権利侵害の判決

 

  2015年12月16日に、19か月近くにわたり、社会の各界の注目を集めた、瓊瑶氏が于正氏に訴訟を提起したテレビドラマ「宮鎖連城」の関連のエグゼクティブ・プロデューサー、プロデューサー、出資者などによる著作権侵害事件について、北京市高級人民法院は最終判決を下し、于正氏などの一審被告が提起した控訴請求を棄却し、原判決を維持した。判決によると、于正氏は瓊瑶氏に公に謝罪し、経視文化などの4社は「宮鎖連城」の放映を直ちに停止し、各社は瓊瑶氏の経済損失および適正な支出の計500万元の連帯賠償責任を負わなければならない。

  2014年4月8日に、「宮鎖連城」は于正氏がプロデュースを務める「宮」シリーズの最終作として湖南衛星テレビで放送され、放送初日に当時の省級衛星テレビの新ドラマでは最高視聴率を記録した。その1週間後に、著名な作家で、脚本家の瓊瑶氏が突然自身の微博(マイクロブログ)上で、「宮鎖連城」は自身の作品「梅花烙」の盗作である旨を発表し、そのドラマの放送停止を要求した。これについて、于正氏は盗作を否定し、単なる偶然の一致で、不慮の事故に過ぎない旨のコメントを発表した。

  事態の進展に伴って、2014年5月に、瓊瑶氏は于正氏および「宮鎖連城」の関連のエグゼクティブ・プロデューサー、プロデューサー、出資者に対して権利侵害訴訟を提起し、各関係者に権利侵害の停止、経済損失2,000万元の賠償、さらに公開謝罪を要求した。

  2014年末に、北京市第三中級人民法院は審理を経て一審判決を下し、文学作品において参考にする状況が存在することは避けがたいが、于正氏がテレビドラマ「宮鎖連城」に使用した人物の設定、人物の相関関係などは、瓊瑶氏の「梅花烙」に対する適正な参考の範囲を超えていることから、権利侵害を構成すると判断し、于正氏に公開謝罪、「宮鎖連城」の関連のエグゼクティブ・プロデューサー、プロデューサーなどに放送行為の即刻停止、各関係者に瓊瑶氏に対する500万元の連帯賠償責任の負担を命じる判決を下した。

  一審判決後に、于正氏などは同判決における事実認定が不明確である、証拠が不十分である、法律の適用が不適切であるとして、北京市高級人民法院に上訴を提起した。

  北京市高級人民法院は2015年12月16日に瓊瑶氏が于正氏を提訴した権利侵害事件について最終判決を下した。それに続いて、瓊瑶氏も微博を通じて、「この判決は歴史的で、今後の指標となる内容であり、オリジナル作品の保護にとって、意義深く、偉大なものである」とのコメントを発表した。

  講評

  テレビドラマ制作市場のさまざまな資源の中で、脚本は間違いなく核心的な位置にある。脚本家にとって、脚本の創作活動は参考、創造と不可分であるが、参考と盗作の境界線をどのように把握するか、また、脚本の中のストーリー設定、人物の背景、個別の状況設定が近似していることが権利侵害を構成するか否かについて、著作権法の中から明確な答えを見つけることは困難である。中国の著作権法の規定では思想のみが保護され、表現については保護されていないが、両者間の境界線をどのように明確にするかは、容易ではなく、このことも線引きが難しい著作権の問題をさらに厄介にさせている。本件の審理における考え方は類似するテレビドラマの脚本の著作権紛争事件において参考基準になるといえる。

 
 
「星河湾」商標権侵害および不正競争事件

 

  広州宏富房地産有限公司(以下、宏富公司という)は第1946396号および第1948763号結合商標を保有し、それぞれ第36類「不動産賃貸、不動産管理」などおよび第37類「建築」などのサービス項目への使用が定められているが、その後広州星河湾実業発展有限公司(以下、星河湾公司という)に譲渡した。

  宏富公司は許諾を受け上述の2種類の登録商標を使用し、自身の名義により権利侵害訴訟を提起する権利を有している。宏富公司およびその関係会社は相次いで広州市、北京市、上海市などで「星河湾」の名を冠する不動産開発事業を実施し、「星河湾」不動産事業および星河湾公司は相次いでさまざまな栄誉を獲得した。

  2000年から、江蘇煒賦集団建設開発有限公司(以下、煒賦公司という)は江蘇省南通市に相次いで「星河湾花園」、「星辰花園」、「星景花園」などの多くの不動産事業を展開し、物件名称はいずれも南通市民政局の承認を得た。星河湾公司、宏富公司は煒賦公司が開発した不動産事業の中で使用されている「星河湾」の文字が、自身の登録商標を侵害し、不正競争を構成するとして、訴訟を提起した。

  江蘇省南通市中級人民法院は一審において、煒賦公司が使用する「星河湾花園」は同社が開発した物件名称であり、これにより消費者にその物件の出所について混同を生じさせることはなく、商標権侵害を構成せず、そこには主観的なフリーライド(ただ乗り)の故意は存在せず、客観的にも消費者の誤認をもたらしておらず、不正競争も構成しないと判断し、星河湾公司、宏富公司の訴訟請求を棄却する判決を下した。星河湾公司、宏富公司はこれを不服として、江蘇省高級人民法院に上訴を提起した。江蘇省高級人民法院は二審判決で上訴を棄却し、原判決を維持した。星河湾公司、宏富公司はなおもこれを不服として、最高人民法院に再審を申し立てた。最高人民法院は審理を経て煒賦公司が「星河湾」商標に類似する「星河湾花園」を物件名称として使用したことは、関連の公衆の混同、誤認を容易にもたらすものであり、星河湾公司、宏富公司の関連の商標権の侵害を構成すると判断し、一審、二審判決を取り消し、煒賦公司に販売前の物件および今後開発予定の物件に関連の「星河湾」の名称を物件名称として使用してはならず、さらに星河湾公司、宏富公司の経済損失5万元の賠償を命じる判決を下した。

  講評

  本件は不動産販売などのサービスの類別上における登録商標の保護および権利侵害の認定後の責任負担の問題に関わり、社会から広く注目を集めた。最高人民法院の再審判決では、商標権などの知的財産権と物権などの財産権が抵触した場合、当事者に使用差止の法的責任を負わせる判決を下すか否かは、善意者保護の原則に従い、同時に公共の利益を考慮しなければならないことが明確にされている。本件において煒賦公司の「星河湾」の文字を含む物件名称がすでに民政部門の承認を受け、物件の住民もすでに入居して数年が経過し、さらにその者が物件購入時に物件名称による星河湾公司の商標権の侵害を知っていることを証明する証拠はなく、その物件名称の使用差止を命じる判決を下した場合、商標権者と公共の利益および物件の住民の利益の均衡が崩れることから、その物件名称の使用差止を命じる判決は下さないが、販売前の物件および今後開発予定の物件上に関連の「星河湾」の名称を物件名称として使用してはならないとした。本件の判決は合法的な範囲内で商標権者の利益を擁護するとともに、社会公共の秩序および公共の利益にとってあってはならない影響および侵害を回避し、司法裁判における価値を導く役割を十分に発揮した。

 
 
「『鄭58』育成者権事件」で約5,000万元の賠償の判決

 

  2014年8月に、河南金博士種業股份有限公司(以下、金博士公司という)は自身の育成者権が侵害されたとして、北京徳農種業有限公司(以下、北京徳農公司という)と河南省農業科学院を相手取り、河南省鄭州市中級人民法院に訴訟を提起し、約5,000万元の賠償を請求した。2015年に、鄭州市中級人民法院は同事件について一審判決を下し、北京徳農公司による金博士公司の「鄭58」トウモロコシ品種に関する育成者権の侵害を認定し、金博士公司への4,950万元余りの賠償を北京徳農公司に命じる判決を下した。

  「鄭単958」は河南省農業科学院食糧作物研究所が「鄭58」を雌株、「昌7-2」を雄株として交雑を行い育成した中早熟トウモロコシ品種である。金博士公司は「鄭58」トウモロコシ品種の育成者権を保有し、その後河南省農業科学院と権利の相互交換方式により河南省農業科学院およびその傘下の関連会社が「鄭58」を使用して「鄭単958」トウモロコシ品種を育成することを許諾した。

  その後、金博士公司は北京徳農公司が許諾を得ずに「鄭58」を無断で使用して「鄭単958」トウモロコシ品種を育成し、販売していることを発見した。2014年8月に、金博士公司は育成者権の侵害を理由として、北京徳農公司および河南省農業科学院を相手取り、法院に訴訟を提起し、4,950万元の賠償を請求した。

  北京徳農公司は、2010年7月に河南省農業科学院から「鄭単958」の生産経営権および「鄭58」の使用権を獲得しており、その行為は権利侵害を構成しない旨の弁論を行った。

  鄭州市中級人民法院は審理を経て、北京徳農公司が保有する「鄭58」植物新品種の使用権は2010年7月1日までとしなければならないと判断し、それにより北京徳農公司が2010年7月1日以降に「鄭58」トウモロコシを使用して交雑を行い「鄭単958」トウモロコシ交雑種子を繁殖させた行為が権利侵害を構成すると認定した。以上のことから、北京徳農公司に金博士公司への4,950万元余りの賠償、河南省農業科学院に上述の賠償について300万元の範囲内で連帯責任の負担を命じる判決を下した。

  調べによると、北京徳農公司は一審判決結果を不服として、すでに河南省高級人民法院に上訴を提起したという。

  講評

  ここ数年、育成者権の侵害現象が時折発生しており、これによる紛争も日増しに増えている。しかし、司法実務から見ると、育成者権紛争において、大部分の権利者が獲得する賠償額は相対的に低く、育成者の開発への積極性にある程度マイナスの影響を及ぼしている。本件において、鄭州市中級人民法院による約5,000万元の一審判決の賠償額はこれまでの最高額を塗り替えるものと言え、業界内で広く注目を集め、議論を巻き起こした。