事件の概要
クライアントの青島X社は、石油タンク、ガソリンスタンドおよび関連分野向けの安全機器と技術サービスを主力事業とするハイテク企業であり、同社は現在、静電気警報器、漏えい検出器、液面計、定量車両積載システム、オイルガス回収オンラインモニタリング、真空ポンプ、水中ポンプおよび安全防護製品などの複数のシリーズ製品を有している。2021年10月、クライアントの青島X社は展示会で伸縮式接地装置を発表するとともに、対外的に販売を開始した。
本件において、北京Y社の係争実用新案は存続期間を徒過した実用新案権であり、同社は青島X社が実用新案権の存続期間内に許諾を得ずにその実用新案を実施した行為は専利法の規定に違反する旨を主張し、賠償額50万元を請求する訴訟を提起し、さらに法院に被疑侵害製品に対する証拠保全と現場検証の実施を申し立てた。
青島X社の依頼を受け、集佳弁護団は応訴の準備を精力的に進めた。集佳の弁護士は、北京Y社がこれまでも存続期間を徒過した当該係争実用新案を利用して複数の別の会社にも権利を主張していたことを発見した。係争実用新案の実用新案権評価報告書には次のように明記されている。「請求項1は実用新案権の付与条件を満たさない」「請求項1には専利法第22条第3項に定める進歩性を欠いている」。さらに、原告は請求項1の保護を主張するだけである旨を明確にしており、集佳の弁護士は、本件の原告は実際に進歩性のない請求項により権利を主張していることから、それに対する最も有効な戦略は、係争実用新案に対する無効審判請求であると判断した。
既存の証拠である評価報告書に加えて、集佳の弁護士はさらに追加の検索を行い、複数の専利文献や公開使用の証拠などを収集した。クライアントとの技術に関する緊密な意見交換を行った後、無効審判請求のための証拠の組合せ内容を確定し、国家知識産権局に無効審判を請求した。口頭審理を経て、最終的に、国家知識産権局は無効の審決を下し、係争実用新案の請求項1を含む複数の請求項を無効とした。
これにより、原告の権利基盤はもはや存在せず、訴えの取下げを余儀なくされ、集佳が代理人を務めたクライアントの青島X社は全面的に勝訴した。
事件の意義
実用新案権の存続期間が終了すれば、誰でも自由にその技術を利用することができるが、存続期間内の権利侵害行為に対する法律上の追跡可能性は消滅しない。したがって、期限切れの実用新案権に対する権利侵害訴訟についても、企業は軽視することはできず、できるだけ早く専門の弁護団に依頼し、的確な検索・分析を行ったうえで、無効審判を請求することで、訴訟リスクを回避すべきである。また、本件の我々に対する教訓は、企業は自己の知的財産権の正当な行使権を守るとともに、知的財産権の濫用を防止し、パブリックドメインの技術を自身のものとして利用し、利益を得ようとする行為を根絶させなければならないということである。