最高人民法院知的財産権法廷:法に基づく平等な保護を堅持し、中国企業と外国企業の当事者の協力と相互利益を推進
事件の概要
N社は、欧州の企業であり、コンピュータ数値制御システム(CNC)の世界的な供給業者の1つである。NコンピュータソフトウェアはN社が開発した総合ソフトウェアであり、精密切削工具の製造と再研削に用いられる。N社は中国でコンピュータソフトウェア著作権登記証書を取得しており、Nコンピュータソフトウェアの著作権者である。N社は2021年に訴訟を提起し、甲研削盤有限公司は許諾を得ずにその生産する工作機械にNコンピュータソフトウェアをインストールし、乙精密工具技術有限公司は甲研削盤有限公司の製造した当該侵害ソフトウェアがインストールされた工作機械を使用して生産・経営を行っており、両者はそれぞれ権利侵害製品の生産者と使用者にあたると主張し、両被告に対し、直ちに侵害行為を停止し、連帯して経済的損失500万元および権利保護のための合理的支出17万2,000元を賠償するよう求めた。N社の申立てに基づき、一審法院は乙精密工具技術有限公司の工場内にある異なる型番の工作機械計14台について証拠保全を行い、一部の工作機械の抜き取り検査により、被疑侵害ソフトウェアが存在することを確認した。一審法院は、乙精密工具技術有限公司の権利侵害が成立することを認定し、同社に対して侵害の停止および経済的損失50万元の賠償を命じる判決を下した。N社、乙精密工具技術有限公司はいずれもこれを不服として控訴した。最高人民法院知的財産権法庭二審の合議体は、事件記録を精査し、当事者に対して数回にわたり尋問を実施した結果、双方の対立感情が強く、事実認定と賠償金額のいずれについても大きな争いがあることを把握した。双方の矛盾を根本的に解消し、中国と外国の当事者の正当な権利・利益を平等に保護するため、合議体は双方間の争点を的確に見極め、できる限り事件の事実関係の解明に努めるとともに、審理や尋問のたびに当事者双方と意思疎通を図り、双方の対立感情の緩和を図った。数か月にわたり繰り返し調整作業を行い、最終的に当事者が双方の根本的利益により適った「賠償+正規版への切り替え」の和解案に納得し、自発的に受け入れるよう導いた。即ち、両被告はいずれも侵害行為を停止し、N社に賠償金を一括で支払うとともに、N社との間で5年間の本件に係るコンピュータソフトウェアおよびハードウェアに関する調達契約を締結し、さらに今後発生する紛争の処理手続きおよび中国市場において共同で海賊版対策を進めることでも合意した。双方は最終的に和解契約書を締結し、本件は調停により終結した。
典型事例の意義
本件における調停は、双方の既存の紛争を包括的かつ徹底的に解決しただけでなく、中国の巨大市場という優位性を背景に、中国と外国双方の今後5年間にわたる継続的な協力関係の構築にもつながり、訴訟で争っていた双方を、対立する当事者から協力する当事者へと転じさせた。これは、中国の法院が掲げる「和をもって貴しとなす」「互恵・相互利益」の司法理念を十分に体現するものであり、中国が高水準の対外開放を推進するうえで、良好な法治環境が整っていることを顕著に示す事例となっている。
(出所:最高人民法院)