最高人民法院知的財産権法廷:調停と判決の併用という「中国独自の手法」を用いて、標準必須特許紛争の国際的な包括的和解を促した
事件の概要
某外国企業は広帯域音声信号処理に関する本件に係る6件の標準必須特許の権利者であり、同社は、重慶某科技公司と深セン某科技公司がそれぞれ生産、販売する携帯電話は当該特許の技術的範囲に属し、特許権侵害を構成すると主張した。某外国企業は本件に係る6件の特許について2件の訴訟を提起した。1件目は、重慶某科技公司、福州市台江区の某器材店について福建省福州市中級人民法院に訴訟を提起し、重慶某科技公司に対してその経済的損失および権利保護に要した合理的支出計7,060万元の賠償を請求した。2件目は、深セン某科技公司、南京市の某貿易公司について江蘇省高級人民法院に訴訟を提起し、深セン某科技公司に対してその経済的損失および権利保護に要した合理的支出計1,860万元の賠償を請求した。6件の係争特許は、某外国企業が広東省の某科技公司を提訴し、最高人民法院知的財産権法庭が2023年に判決を下した特許権侵害に関する6件の事件(以下、「先行6事件」という)における係争特許と同一である。一審法院はいずれも最高人民法院の先行6事件を参考として、それぞれ深セン某科技公司および重慶某科技公司に対して某外国企業への経済的損失および権利保護に要した合理的支出の賠償を命じる判決を下した。当事者はこれを不服として、控訴を提起し、最高人民法院知的財産権法庭の二審合議体による3か月以上に及ぶ地道な調停と度重なる協議を経て、両事件について当事者間で国際的な包括的和解が成立し、既存および潜在的なすべての紛争の包括的な解決が実現するとともに、先行6事件において確定した料率に基づき、両事件の和解金について合意に至った。二審法院が作成した調停調書の受領後、重慶某科技公司、深セン某科技公司はいずれも、和解で合意した内容を取り決めた期限内に履行した。
典型事例の意義
第1に、合議体が、当事者が特に重視多した点や潜在的な懸念を的確に把握してこれに対応し、各当事者に紛争の背後にある全体像を共に見極めるよう促し、ゼロサムゲームではなく双方に利益のある解決を目指すよう導いた点である。第2に、合議体が当事者に法理および判決基準について丁寧に説明するとともに、訴訟における機会とリスクを双方に示し、訴訟の結果について合理的期待を形成するよう導き、「徹底抗戦」から「理性的な協議」への転換を促した点である。第3に、世界全体を視野に入れ、当事者が個別の紛争にとどまらず、戦略的な協議を通じて、世界における既存および潜在的な紛争に対する全体的かつ根本的な解決策を模索するよう導いた点である。
(出所:最高人民法院)