事件の概要:
北京拉斐特城堡酒店有限公司(北京ラフィッテキャッスルパーク)は、自ら運営するウェブサイトで、自身が「酒文化、フランス式建築物、彫刻、ガーデニングアートを統合し、大規模なパフォーマンスイベント、パーティー、展示会、エグゼクティブ会議、中国式・洋式の結婚式を行う理想の場所」と宣伝した。拉斐特城堡は2007年から第43類「宿泊所(食事提供旅館)」などのサービスで多くの「LAFFITTE」、「拉斐特」、「拉斐特城堡 CHATEAU LAFFITTE」といった商標を登録出願した。これらの商標は明らかにラフィットワイナリーの商標「LAFITE」、「拉菲」の複製、模倣、翻訳であり、ラフィットワイナリーは中国語の商標「拉斐特」を含め、自身が早期に登録出願した関連商標について、まず先に無効審判を請求した。
2015年10月8日、ラフィットワイナリーは国家知識産権局(旧国家工商行政管理総局商標評審委員会)に無効審判を請求した。商標評審委員会は、係争商標「拉斐特」は、引用商標「LAFITE」の全体の視覚的効果に大きな差異があり、かつ商標の指定役務はラフィットワイナリーの商標「LAFITE」を有名たらしめる商品と大きく異なると判断し、商標「拉斐特」に対して登録を維持する裁定を下した。ラフィットワイナリーはこの裁定を不服とし、北京知識産権法院に提訴した。
法院による判决:
一審の北京知識産権法院と二審の北京市高級人民法院はいずれも、商標「LAFITE」はワイン商品において、係争商標の登録出願日である2007年5月17日より前からすでに著名になっており、馳名商標(日本の著名商標に相当――訳注)と認定されるべきであるとした。ラフィットワイナリーは長年の商業・経営活動を通じて、客観的に「拉菲」と「LAFITE」の間に確固とした関係を築き、中国の公衆も一般的に「拉菲」を「LAFITE」として認識している。この状況において、本事件の係争商標「拉斐特」は、引用商標「LAFITE」の複製、模倣、翻訳に該当する。係争商標は「バイキング、ホテル、宿泊所(旅館、食事付寄宿所)、カクテルパーティーサービス、バー」などを指定役務としており、公衆を誤った方向に導くおそれがあるから、係争商標を無効とすべきである。
典型的な意義:
この事件の典型的な意義は、中国語(漢字)の商標が英語(アルファベット)の馳名商標の複製、模倣、翻訳と認定され、馳名商標が分類を超え、密接な関係にない商品と役務において保護された点にある。
事件は「商標法」第13条第3項の適用に関する問題にすぎないものの、商標の類似性判断、中国語・英語商標の唯一の対応関係の判断、馳名商標の保護範囲の判断、商標出願人の悪意の基準など、さまざまな問題にかかわっている。これらの問題は、論証および立証において全面的に考慮しなければならず、どちらも欠けてはならない。大局的思考を形成することのみが、権利を守る鍵であり、一つひとつ細部を捉えてこそ、事件で勝利を手にすることができる。