最高人民法院による専利権侵害紛争事件審理における法律適用の若干の問題に関する解釈(二)
时间:2016-03-30  来源:

専利権侵害紛争事件を正しく審理するために、「中華人民共和国専利法」、「中華人民共和国民事訴訟法」などの関連法律に基づき、審判実務を踏まえて、本解釈を制定する。

第1条
  特許請求の範囲に二つ以上の請求項がある場合、権利者は、被告がその専利権を侵害したとして提訴する根拠となる請求項を、訴状に明記しなければならない。これについて訴状に記載されておらず、又は記載が明確でない場合、人民法院は、権利者に明確にするよう要求しなければならない。釈明を経ても権利者が明確にしなかった場合、人民法院は、訴えを却下することができる。

第2条
  権利者が専利権侵害訴訟において主張した請求項が、専利復審委員会により無効と宣告された場合、専利権侵害紛争事件を審理する人民法院は、当該無効請求項に基づく権利者の訴えを却下することができる。
  専利復審委員会による専利権無効宣告決定について、確定した審決取消訴訟の判決により取消されたことを証明する証拠がある場合、権利者は、改めて提訴することができる。
  権利者が改めて提訴する場合、訴訟の時効は本条第2項の審決取消訴訟の判決書の送達日から起算する。

第3条
  専利法第26条3項、4項に明らかに違反していることにより、明細書が特許請求の範囲の解釈に用いられず、且つ本解釈第4条に規定されている状況に属しないことにより、専利権の無効宣告が請求された場合、専利権侵害紛争事件を審理する人民法院は、通常訴訟の中止を決定しなければならず、専利権の無効宣告が合理的な期間内に請求されなかった場合、人民法院は、請求項の記載に基づいて専利権の保護範囲を確定することができる。

第4条
  特許請求の範囲、明細書及び添付図面における文法、文字、句読点、符号、図形などに多義の意味があっても、当該領域における通常の技術者が特許請求の範囲、明細書を読むことにより明確に唯一の理解が得られる場合、人民法院は、この唯一の理解に基づいて認定しなければならない。

第5条
  人民法院は専利権の保護範囲を確定するとき、独立請求項の前提部分、特徴部分及び従属請求項の引用部分、限定部分に記載された技術特徴は、いずれも限定の効果がある。

第6条
  係争専利と他の専利とに分割出願など直接的な関連関係がある場合、人民法院は、当該他の専利及びその専利審査包袋、確定した審決取消訴の裁判文書を用いて、係争専利の請求項を解釈することができる。
  専利審査包袋には、専利審査、審判、無効宣告手続きにおいて専利出願人又は専利権者が提示した書面資料や、国務院専利行政部門及びその専利復審委員会が発行した審査意見通知書、面談記録、口頭審理記録、確定した専利復審請求審査決定書と専利権無効宣告請求審査決定書などが含まれる。

第7条
  権利侵害と訴えられた技術案が、組成物の閉鎖形式請求項のすべての技術特徴を含んでいる上に、その他の技術特徴が追加されている場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた技術案が専利権の保護範囲に含まれないものと認定しなければならない。ただし、当該追加技術特徴が通常量の不可避の不純物に当たる場合は、この限りでない。
  前項の組成物の閉鎖形式請求項には、一般的に漢方薬(中医薬)の組成物の請求項は含まれない。

第8条
  「機能的特徴」とは、構造、成分、工程、条件又はそれらの関係などについて、それが発明創造において果たす機能又は効果のみによって限定される技術特徴をいう。ただし、当該領域における通常の技術者が請求項を読むことにより直接的に明確にその技術内容を確定できることが証明された場合を除く。
明細書と添付図面に記載された上記機能又は効果を実現するために必要不可欠な技術特徴と比較して、権利侵害と訴えられた技術案の対応する技術特徴は、ほぼ同一の手段によって、同一の機能を実現し、同一の効果を収めるものであり、かつ、当該領域における通常の技術者が権利侵害と訴えられた行為の発生時に創造的な労働をせずに想到できるものである場合、人民法院は、当該対応する技術特徴が機能的特徴と同一又は均等であると認定しなければならない。

第9条
  権利侵害と訴えられた技術案が、請求項における使用環境の特徴で限定された使用環境では適用できない場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた技術案が専利権の保護範囲に含まれないものと認定しなければならない。

第10条
  請求項において、製造方法により特定された製品の技術特徴について、被告侵害製品の製造方法がそれと同一でも均等でもない場合、人民法院は、被告技術案が専利権の保護範囲に含まれていないものと認定しなければならない。

第11条
  方法請求項に工程の順序が明確に記載されていなくても、当該領域における通常の技術者が特許請求の範囲、明細書及び添付図面を読むことにより、その工程の順序が特定の順序に従って実施しなければならないと直接的に明確に確定できる場合、人民法院は、当該工程の順序は専利権の保護範囲を限定する効果を有すると認定しなければならない。  

第12条
  請求項において「少なくとも」、「超えない」などの用語で数値の特徴が特定され、かつ、当該領域における通常の技術者が、権利者が当該用語の技術特徴に対する厳格限定効果を特に強調していると認め、権利者が、それとは異なる数値特徴を均等特徴に該当すると主張する場合、人民法院は、これを支持しない。

第13条
  専利出願人、専利権者による、専利権の付与?確認手続きにおける特許請求の範囲、明細書及び添付図面を限定する補正又は陳述が明確に否定されたことを、権利者が証明できる場合、人民法院は、当該補正又は陳述は技術法案の放棄には至っていないと認定しなければならない。

第14条
  人民法院は、一般消費者の意匠に対する知識レベルや認知能力を認定するに当たり、権利侵害と訴えられた行為の発生時の登録意匠が属する同一又は類似する種類の製品の「設計空間」を考慮しなければならない。設計空間が大きい場合、通常一般消費者は異なる意匠間の小さな差異に気づきにくいと人民法院は認定することができる。設計空間が小さい場合、通常一般消費者が異なる意匠間の小さな差異に気づきやすいと人民法院は認定することができる。

第15条
  セット製品の意匠専利について、権利侵害と訴えられた意匠がそのうちの一つの意匠と同一又は類似する場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた意匠が意匠専利権の保護範囲に含まれるものと認定しなければならない。

第16条
  組み立て方が一つしかない組立製品の意匠専利について、権利侵害と訴えられた意匠が当該組立製品の組立状態での全体の意匠と同一又は類似する場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた意匠が意匠専利権の保護範囲に含まれるものと認定しなければならない。
  各部品間に組立関係がないか、又は組み立て方が唯一でない組立製品の意匠専利について、権利侵害と訴えられた意匠がそのすべての単独の部品の意匠のいずれとも同一又は類似する場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた意匠が意匠専利権の保護範囲に含まれるものと認定しなければならない。権利侵害と訴えられた意匠が一部の単独の部品の意匠を欠いているか、又はそれと同一でも類似でもない場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた意匠は意匠専利権の保護範囲に含まれないと認定しなければならない。

第17条
  状態が変化する製品の意匠専利について、権利侵害と訴えられた意匠が状態変化図に示された各種使用状態での意匠と同一又は類似している場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた意匠は意匠専利権の保護範囲に含まれると認定しなければならない。権利侵害と訴えられた意匠が一部の使用状態での意匠を欠いているか、又はそれと同一でも類似でもない場合、人民法院は、権利侵害と訴えられた意匠は意匠専利権の保護範囲に含まれないものと認定しなければならない。

第18条
  権利者が、専利法第13条に基づいて、発明専利の出願公告日から登録公告日の間に当該発明を実施した単位又は個人に適切な額の費用を支払うよう請求した場合、人民法院は、関連専利の実施許諾料を参照して合理的に決めることができる。 専利出願公告時に出願人が保護を求めた範囲が専利登録公告時の専利権保護範囲と一致せず、権利侵害と訴えられた技術案が上記二つの範囲のいずれにも含まれている場合、人民法院は、被告が上記期間内に当該発明を実施したものと認定しなければならない。権利侵害と訴えられた技術案がそのうちの一つの範囲にしか含まれていない場合、人民法院は、被告が上記期間内に当該発明を実施していないものと認定しなければならない。
  発明専利の登録公告日以降に、専利権者の許可を得ずに、生産経営の目的で本条第1項の期間内に他人が既に製造、販売、輸入した製品について使用、販売の申出、販売を行い、且つ当該他人が既に専利法第13条に規定されている適切な額の費用を支払い、又は書面をもって支払いを承諾している場合、上述の使用、販売の申出、販売行為が専利権侵害に当たるとの権利者の主張について、人民法院は、これを支持しない。

第19条
  製品の売買契約が法に基づいて成立している場合、人民法院は、それが専利法第11条における「販売」に当たるものと認定しなければならない。

第20条
  専利方法により直接得られた製品にさらに加工、処理を加えて得られた後続製品について、再び加工、処理を行う場合、人民法院は、当該行為が専利法第11条における「当該専利方法により直接得られた製品を使用」する行為に当たらないものと認定しなければならない。

第21条
  関連製品が専ら専利の実施に供される原材料、設備、部品、中間物などであると明らかに知りながら、専利権者の許可を得ずに、生産経営の目的で当該製品を他人に提供して専利権侵害行為を実施させ、権利者が、当該提供者の行為が権利侵害責任法第9条に規定する「権利侵害幇助行為」に当たると主張する場合、人民法院は、これを支持しなければならない。
  関連製品、方法が専利権を付与されたことを明らかに知りながら、専利権者の許可を得ずに、生産経営の目的で他人に実施するよう積極的に勧誘し、権利者は当該勧誘者の行為が権利侵害責任法第9条に規定する「権利侵害教唆行為」に当たると主張する場合、人民法院は、これを支持しなければならない。

第22条
  被告が主張した従来技術又は既存意匠の抗弁について、人民法院は、専利出願日に施行されていた専利法に基づいて従来技術又は既存意匠を認定しなければならない。

第23条
  権利侵害と訴えられた技術案又は意匠が、先に権利付与された専利権の保護範囲に含まれ、被告がその技術案又は意匠が専利権を付与されていることをもって事件に係る専利権の非侵害の抗弁をする場合、人民法院は、これを支持しない。

第24条
  推奨される国家標準、業界標準又は地方標準において必要な専利の情報が明示されており、被告が、当該標準を実施するに当たって専利権者の許可を必要としないことを理由に、当該専利権の非侵害を主張する場合、人民法院は通常、これを支持しない。
  推奨される国家標準、業界標準又は地方標準において必要な専利の情報が明示されており、専利権者と被告による当該専利の実施許諾の条件の協議の際に、専利権者が故意に、その標準を作成した際に承諾した「公平、合理的、非差別的」の許諾義務に違反することにより、専利実施許諾契約が合意できず、且つ被告には協議において明らかな故意又は過失がなく、専利権者が標準実施行為の差し止めを請求した場合、人民法院は通常、これを支持しない。
  本条第2項の実施許諾条件は、専利権者と被告が協議して決めなければならない。十分な協議を経ても合意できなかった場合、人民法院に決定するよう請求することができる。人民法院は、「公平、合理的、非差別的」の原則により、専利の革新性の程度及び標準において果たす役割、標準が所属する技術分野、標準の性質、標準の実施の範囲、関連する許諾条件などの要素を総合的に考慮して、上記実施許諾条件を決定しなければならない。
  法律、行政法規において、標準における専利の実施に関して別途規定がある場合、その規定に従う。

第25条
  専利権者の許可を得ずに製造され販売された専利権侵害製品であることを知らずに、生産経営の目的で、当該製品について使用、販売の申出又は販売を行い、かつ、当該製品の合法的な出所を証明できる場合、権利者が上記販売の申出者、販売者による侵害行為を差し止めるよう請求する場合、人民法院は、これを支持しなければならない。但し、権利侵害品の使用者が当該製品につき、既に合理的な対価を支払ったことを証明できる場合を除く。
  本条第1項における「知らずに」とは、「実際に知らず、且つ知りえない」ことをいう。
  本条第1項における「合法的な出所」とは、合法的な販売ルート、通常の売買契約など正当な商業行為による製品の購入行為をいう。合法的な出所について、使用者、販売の申出者又は販売者は取引慣習に沿った関連の証拠を提示しなければならない。

第26条
  被告の行為が専利権侵害に当たり、権利者が差し止めを請求する場合、人民法院は支持しなければならないが、国家利益、社会利益を考慮し、人民法院は被告に対して差し止めを命じずに、合理的な費用の支払いを命じることができる。

第27条
  権利侵害行為によって権利者が実際に被った損害が確定できない場合、人民法院は専利法第65条1項の規定に従い、権利者に対し、権利侵害者が権利侵害行為によって得た利益についての立証を要求しなければならない。
  権利者が、権利侵害者の得た利益に関する一応の証拠を提供したが、権利侵害行為と関係する帳簿、資料が主に権利侵害者に支配されている場合、人民法院は賠償金額を確定するため、権利侵害者に対して、権利侵害行為に関係する帳簿、資料の提供を命じることができる。権利侵害者が提供せず、または偽りの帳簿、資料を提供したときは、人民法院は権利者の主張及び提供された証拠を参照して賠償金額を確定することができる。

第28条
  権利者と権利侵害者が法に基づいて、専利権侵害の賠償金額又は賠償計算方法を約定しており、権利者が専利権侵害訴訟において当該約定により賠償金額を決定するよう主張する場合、人民法院は、これを支持しなければならない。

第29条
  専利権無効宣告決定が下された後、当事者が当該決定に基づいて法に基づいて再審を提起し、専利権無効宣告される前に人民法院が下した未執行の判決、和解調書の取消を請求する場合、人民法院は、再審の中止、及び元の判決、和解調書の執行の中止を決定することができる。
  専利権者が人民法院に十分?有効な担保を提供したうえ、前項における判決、和解調書の継続執行を請求した場合、人民法院は継続執行をしなければならない。権利侵害者が人民法院に十分?有効な反担保を提供したうえ、執行の中止を請求した場合、人民法院は許可しなければならない。人民法院の確定した判決、決定が専利権無効宣告決定を取消さなかった場合、専利権者は、継続執行によって相手にもたらした損失を賠償しなければならない。専利権無効宣告決定が人民法院の確定した判決、決定に基づいて取消され、専利権が継続して有効である場合、人民法院は前項の判決、和解調書に基づいて上述の反担保の財産を執行することができる。

第30条
  専利権無効宣告決定に対し、法定期限内に人民法院に出訴せず、又は出訴後に裁判で当該決定を取消さないことが確定し、当事者が当該決定に基づいて再審を提起して、人民法院が専利権無効宣告前に下した、まだ執行されていない判決、和解調書の取消を請求した場合、人民法院は、再審しなければならない。当事者が当該決定に基づいて、人民法院が専利権無効宣告前に下した、まだ執行されていない判決、和解調書の執行終了を請求した場合、人民法院は執行を終了しなければならない。

第31条
  本解釈は2016年4月1日から施行する。これまでに最高人民法院が公布した関連する司法解釈が本解釈と一致しない場合には、本解釈に準じる。