――「新時代における法治化を推進する2024年度十大事件候補」に選出
事件の概要
原告は人工知能モデルを使用し、プロンプト入力方式で係争画像を生成した後、某ネットワークプラットフォーム上で公開した。被告は別のネットワークプラットフォーム上で文章を公開し、文章の挿絵として当該画像を使用した。原告は、被告が当該画像を無断で使用し、かつ某ネットワークプラットフォーム上での原告の署名ウォーターマークを削除したことにより、関連ユーザーに被告が当該作品の作者であると誤認させ、原告が享有する氏名表示権および情報ネットワーク伝播権を深刻に侵害したとして、被告に公開謝罪と経済損失の賠償などを求めた。
法院は審理の結果、以下のように判断した。当該画像自体を見ると、これは先行作品とは識別可能な相違点があることを反映している。また、当該画像の生成過程を見ると、原告は人物およびその表現方法に関してプロンプトで画面要素をデザインし、パラメーターで画面レイアウトなどを設定しており、これは原告による選択と配置を反映している。反証がない限り、当該画像は原告が独立して完成させたものであり、原告の個性的な表現を反映しているため、「独創性」の要件を満たしていると認定することができる。当該画像は、線と色によって構成された審美的意義を有する平面的造形芸術作品であり、美術作品に該当し、著作権法の保護を受ける。当該作品の権利帰属に関して、当該画像は、原告の知的投入に基づいて直接誕生したものであり、原告の個性的な表現を反映しているため、原告は当該画像の作者であり、その著作権を享有する。被告は原告の享有する著作権を侵害しており、権利侵害責任を負担すべきである。最終的に、法院は、被告は謝罪と損害賠償をするとの判決を下した。
選出理由
本件では、人工知能が生成したコンテンツの法的保護に関して有益な検討が行われた。本件の判決は、著作権法は「自然人による創作物」のみを保護するという見解を維持し、人工知能が生成した画像の「作品」としての属性と、ユーザーの「創作者」としての地位を認めることで、人工知能ツールを利用して創作を行うユーザーの意欲を後押しし、著作権法の「作品の創作を後押しする」という本来の目的を実現し、人工知能の発展における人間の主導的地位を強化した。
(出所:中華人民共和国最高人民法院)