事件の概要
原告の数某(北京)科技股份有限公司(以下、「数某公司」という)は、合法的に取得した権限に基づき、本件に係る1,505時間の標準中国語の音声データを収集して登録し、そのデータについて「データ知的財産権登録証」を取得している。同社は、被告の隠某(上海)科技有限公司(以下、「隠某公司」という)が許諾を受けずに、数某公司の200時間の部分的なデータセット(以下、「係争データセット」という)を公開した行為は不正競争を構成する旨を主張した。
一審法院は、係争データセットは営業秘密に該当し、隠某公司の開示、使用行為は数某公司の営業秘密を侵害すると判断し、10万2,300元の賠償を命じる判決を下した。隠某公司はこれを不服として控訴した。
二審法院は、「データ知的財産権登録証」は数某公司が財産的利益を有し、データ出所が合法的であることを示す推定的証拠であり、係争データセットが公開されたことにより営業秘密の要件を満たさず、かつ編集著作物の構成要件にも適合しないが、係争データセットは数某公司が多大な技術、資金および労力を投入し、形成した商業的価値を有するデータ項目であり、その正当な権利・利益は不正競争防止法により保護されると判断した。データ利用者はオープンソースデータを使用する場合に、オープンソースライセンス契約を遵守する必要があるが、隠某公司が関連契約を遵守せず、商業道徳に反し、数某公司の権益および市場競争の秩序を損ねたことは、反不正競争法(不正競争防止法)第2条の規定に反する行為である。このため、二審法院は営業秘密に関する認定を調整し、一審判決の結論を支持した。
典型事例の意義
本件は、データ知的財産権登録証書が、権利主体およびデータ出所の合法性に関する推定的証拠としての効力を有することを初めて明確に示すとともに、データ要素に係る各当事者の権利と義務を合理的かつ正確に定義付けすることにより、理論上および実務上の両面で関心を集める課題に積極的に対応した事例である。本件の発効済み判決は、データ流通・利用の促進という国の政策目標に沿うものであり、データサービス分野における公正な競争秩序を維持する内容となっている。
(事例出所:北京法院2024年度知的財産権司法保護10大事例)