事件の概要
国家市場監督管理総局(被告。以下、「市監督総局」という)は、托某西薬業公司(原告、以下、「托某西公司」という)、先某薬業有限公司(第三者、以下、「先某公司」という)が自ら提出した先某公司による托某西公司の株式取得に伴う事業者集中の申告資料を受領した。市監督総局は、審査・評価を経て、当該事業者集中は申告基準に達していないものの、中国国内のバトロキソビン注射液市場において競争を排除または制限する効果を有する可能性があると認められることから、先某公司が提出した制限的条件付きの誓約案は当該事業者集中が競争にもたらす不利な影響を効果的に軽減することができ、中国の独占禁止法などの関連法令の条件付き承認の適用事由に合致すると判断し、当該事業者集中を制限的条件付きで承認することを決定した。托某西公司はこれを不服として、行政不服審査を請求した。市監督総局は不服審査の裁決を下し、原決定を維持した。托某西公司は不服審査の裁決を不服として訴訟を提起することを決定した。
一審法院は、本件は申告基準に満たない「自発的な申告」事由に該当し、法執行機関は「競争を排除また制限する効果を有する可能性がある」事業者集中行為に対して実体審査を行うことができると判断した。審査決定により事業者集中後の申告者である托某西公司は法定義務を課され、托某西公司は行政訴訟を提起する訴えの利益を有する。事業者集中審査に対する法執行の目的は、主に事業者集中により生じる競争の問題を解決することであり、事業者集中以前から存在している競争の問題を解決することではない。バトロキソビン注射液市場の競争状況は事業者集中以前からすでに存在しており、本件の審査対象に該当しない。競争を排除、制限する効果を有し、または有する可能性がある事業者集中について、国務院の独占禁止に係る法執行機構が必ずしも禁止するとは限らない。評価を経て、本件の誓約案は有効性、実行可能性、適時性を備えており、事業者集中が競争にもたらす不利な影響を効果的に減少させることができ、本件の決定および不服審査の裁決は適法かつ妥当である。このため、托某西公司の訴訟上の請求を棄却する旨の判決が下された。一審判決後、各当事者はいずれも控訴せず、判決は発効した。
典型事例の意義
本件は、事業者集中の申告に関する行政不服審査の裁決に対して提起された全国初の行政訴訟事件であり、独占禁止に係る行政行為が訴訟の対象となり得るか否か、事業者集中の審査内容、制限的条件付き誓約案の評価方法などの諸問題について初めて明確に認定され、事業者集中の申告者、独占禁止に係る法執行機構にとって比較的明確な行動指針を示すものとなり、同類事件の審理に対して重要な模範的意義を有する。
(事例出所:北京法院2024年度知的財産権司法保護10大事例)