フランスの「sisley希思黎」はフェイシャルスキンケアとボディースケアの分野で世界的に殿堂入りを果たすほどの名声を得ているブランドであり、1976年の創立以来、一貫して科学的に抽出した天然植物成分(植物エッセンスと植物オイル)を美容製品に使用していることを謳って、多くの消費者に愛好され、sisley希思黎製品は世界各地で持続的な大成功を収めており、グローバル市場でも急速にブランドを成長させてきた。2010年11月12日、自然人陳某は全くそっくりの「希思黎Sisley」を、第44類「保健、アロマテラピー、療養院、医院、美容院、マッサージ、植物スキンケアなどサービス」を指定役務として商標登録を出願した。フランスC.F.E.B. Sisley有限会社(以下、「Sisley社」という)は、その第3類「化粧品、香水、エッセンスオイルなど」を指定商品とする先願登録商標「希思黎sisley」、「希思黎」、「sisleyおよび図案」の商標を引用して異議申立を行った。商標局は異議対象商標の登録を許可しない旨を決定した。陳某がこれを不服として商標評審委員会に不服審査を請求したところ、商標評審委員会は第44類役務と引用商標第3類指定商品は差異が大きく、類似商品ではないため、容易に誤認混同を生じることもないものであり、引用商標は化粧品などの商品において比較的高い知名度を有するが、現在の証拠では著名商標として認定するに足るものではないとして、異議対象商標の登録を決定した。北京市第一中級人民裁判所も商標評審委員会の決定を支持した。
集佳弁護士事務所の弁護士はSisley社の代理人として北京市高級人民裁判所に控訴する過程において、「希思黎sisley」ブランドの中国における宣伝・販売の証拠を補強する一方で、自然人陳某が他人の周知商標について多数の冒認出願を行っていることの証拠を十分に示した。最終的に、北京市高級人民法院は二審判決において引用商標の第3類「化粧品」指定商品において既に著名性を有していること、陳某による第44類指定役務の「希思黎Sisley」商標出願は、引用商標の信用を不当に利用して公衆の誤認を招くものであり、Sisley社の利益が損害を受ける可能性があると認定し、判決では商標評審委員会の決定と一審法院判決を取下げた。知る限りにおいて、これは「希思黎Sisley」ブランドが司法において著名商標として認定された初めての事例である。
北京市高級人民法院の判決は、新「商標法」の実施後、著名商標の認定の敷居がやや引き下がり、権利保護の必要性が確実に存在する場合、あまりに厳しい証拠基準で知名度を判断することはしないという点を改めて示した。また、登録出願人による冒認の意図が明白である場合、知名度に関する証拠基準を相応に緩和することにより、悪意のある商標登録の抑止を強化することに繋がる。