中国最高人民法院がファミリーイナダ株式会社の特許無効行政訴訟の判決を下し、二審に勝訴

2020-06-10

   事件の事実:

   特許権者のファミリーイナダは2008年7月14日に「椅子式マッサージ機」を名称とする特許(以下、「係争特許」)を出願し、2015年2月25日に権限を付与された。

   第三者である上海栄泰は、係争特許の請求項が不明確である、新規性および進歩性がないなどの理由により当該特許の無効審判を請求して、新規性および進歩性の評価に用いる9件の証拠を引用した。国家知識産権局は無効とする審決を下し、請求項1~16はすべて進歩性がないと判断し、本特許を全部無効とした。

   ファミリーイナダは無効とした審決を不服とし、北京知識産権法院に行政訴訟を提起したが、北京知識産権法院は一審において、国家知識産権局が下した無効審決を維持し、ファミリーイナダの訴訟上の請求を棄却する判決を下した。

   ファミリーは一審判決を不服とし、最高人民法院に上訴した。

 

   法院の判決:

   このほど、最高人民法院は判決を下し、係争特許に進歩性があるとするファミリーイナダの上訴における請求は成立するが、国家知識産権局復審委員会および北京知識産権法院が係争特許に進歩性がなく無効とすべきであることを理由に下した無効審決および一審判決は法律の適用に誤りがあり、取り消すべきであると判断した。これにより、ファミリーイナダと集佳の弛まぬ努力の下で、集佳が代理人を務めたファミリーイナダ事件は最終的に勝利を収めた。

 

   事件の評論・分析:

   専利の権利確定訴訟において、専利の進歩性の判断は双方の間で最も多く議論され、最も意見が割れる問題である。進歩性の判断においては、先行技術の文献中に技術的示唆が存在するか否かをどのように確定するかが、先行技術との間で組み合わせが可能か否かを決定する上で核となる問題である。本件の争点は「当業者に本件証拠5と証拠1および技術常識に基づいて組み合わせた技術的示唆が存在し、それにより『当該腕部サポート部位がその座面に座った被治療者の前腕部、上腕部および肩部に対応して一体をなし、しかも各部位の相対的位置がすでに固定されている(以下、「論争の相違点」』という技術方案を得られるか否かである」。

   最高人民法院の判断によると、技術的示唆とは先行技術に特定の教示が存在し、当業者が客観的に技術的課題に直面したときに、当該教示を考慮して最も近い先行技術を改良することにより、保護を求める発明を取得し、発明の技術的効果を実現するよう促すことをいう。当業者が先行技術から知ることができる示唆は原則的に具体的で、明確な技術的手段でなければならず、抽象的な構想または一般的な研究の方向性ではない。

   本件に話を戻すと、本件証拠5の技術方案に基づき、当業者が「姿勢を調節しても腕部の各部位の相対的位置の固定した状態を保持しなければならない」という技術的課題を解決する必要性はまったく想定し得ない。しかし本件証拠1は阻害要因、つまり「証拠1の第1保持部と第2保持部は連結して一体となっているが、第1保持部と第2保持部の間は動かすことが可能である」ことを示しており、したがって証拠5、証拠1のいずれにも被治療者の前腕部、上腕部および肩部の「相対的位置を一定とする」明確で具体的な示唆は存在しない。

   また、この判決において、最高人民法院は「証拠1では肩部に対応する構造が公開されていないだけでなく、当業者が肩部と腕部に対する一体式のマッサージの提供を容易に想到することを証明する証拠もなく、できる限りより多くの部位に対してマッサージを提供することがマッサージ機器における広い需要であることから、上腕部に対応する第1保持部の範囲がさらに肩部へと拡張し、肩部に対応する部分を形成すると当業者が容易に想到するとの結論に直接結び付けることはできない」と明確に指摘しており、この確定的な認定は実際に専利の権利付与・権利確定の過程においてよく用いられる「事後諸葛亮(後知恵)」の規則に対する否定的な姿勢を示すものである。言い換えると、進歩性を判断するときに、本特許の技術方案を見た後に、本特許と先行技術の間の違いが非常に容易に想到する改良であると当然のように判断してはならず、明確で、具体的な示唆があるか否かを判断しなければならない。

   以上の内容を総括すると、専利の権利確定事件において、まず本特許および証拠の技術方案を完全に熟知し、本特許の請求項と最も近い先行技術を対比してその違いを明確にし、さらに区別される技術的特徴が実際に解決しようとする技術的課題を確定し、その後に先行技術に明確な教示があるか否かを見なければならない。示唆と組み合わせていない証拠の間の技術的特徴を機械的に寄せ集め、係争特許の技術方案を得ようとしてはならず、これは発明者の創造的活動を無視するものである。

 

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