集佳が代理人を務める湖南広播電視台(以下「被告」または「湖南台」という)、湖南快楽陽光互動娯楽伝媒有限公司、北京愛奇芸科技有限公司(以下「被告」と総称する)と北京身臨其境文化股フン有限公司(旧名称:北京太陽光影影視科技有限公司、以下「原告」という)との商標権侵害紛争において、北京市海淀区人民法院は、被告が本件番組の放送および宣伝PRにおいてイ号標章を使用した行為は、関連公衆に本件商標とイ号標章との混同を引き起こすのに十分ではないと認定した。身臨其境社は、被告3社について、本件商標が有する専用権を侵害したと主張したが、事実および法的根拠を欠くとして、原告の請求をすべて棄却する旨の判決を下し、事件受理費用8万2,765元を原告の負担とした。本件は、原告が上訴し、その後上訴を取り下げたため、一審判決が発効した。
基本的な事件概要:
湖南広播電視台(Hunan Broadcasting System)は、湖南省党委員会直属の庁級メディア事業単位であり、旧湖南広播影視集団(Golden Eagle Broadcasting System)の再編に伴い、2010年6月28日に設立された。「声臨其境」は、被告・湖南広播電視台が独自に制作したオリジナルの声優コンテスト・バラエティー番組である。同番組は、主に三つの部分で構成されている。一つ目は「経典之声(クラシック・ボイス)」で、ゲストが映画・テレビ番組・アニメの名作を吹き替えるもの。二つ目は「魔力之声(マジック・ボイス)」で、ゲストがライブで難しい言い回しのセリフや吹き替えに挑戦するもの。三つ目は「声音大秀(ボイス・ビッグショー)」で、ゲストがセリフ劇にライブ出演するものである。「声臨其境」は、声をテーマにしたテレビ番組であり、声優など声の仕事に携わる人を招き、人を「見る」のではなく「聞く」という特別な形式でライブパフォーマンスを競う。
原告は、第12253086号商標「身臨其境」、第10284337号商標「身臨其境」、第22297784号商標「身臨其境」(以下、これらを「本件商標」と総称する)の商標権者であり、湖南台が原告の許可なく制作したテレビ番組「声臨其境」の中で、本件商標に類似する「声臨其境」の文字と標章を大量に使用したとして、以下の請求を法院に提起した。(1)被告3社は、身臨其境社の商標権を侵害する行為、すなわち、身臨其境社の第12253086号商標、第10284337号商標、第22297784号商標で用いられているものと同一または類似の標章と文字の使用を直ちに停止する。(2)愛奇芸公司は「愛奇芸網」のトップページに、湖南台と快楽陽光社は「芒果TV」サイトのトップページと「新浪網」のトップページに共同で声明を掲載し、被告3社の商標権侵害行為が身臨其境社にもたらす悪影響を排除する。(3)被告3社は共同で、経済的損失1,000万元および合理的支出15万2,500元を身臨其境社に支払う。
集佳法律事務所は、湖南台および快楽陽光社の代理人として答弁を行った。まず、本件が商標権侵害を構成しないとして5つの観点から論述した。次に、仮に被疑侵害行為が成立したとしても、本番組の広告収入と原告会社の本件商標との間には因果関係がないことを主張した。法院は最終的に当方の見地を支持し、原告の請求をすべて棄却した。
典型的な意義:
本件は主に、商標について、音や形は近いが、含意は区別をするのに十分であり、類似を構成しない、また、混同や誤認(正混同、逆混同を含む)を構成しない、という2つの観点から、権利侵害を構成しないと認定されたものである。また、原告の第38類登録商標は3年間実質的に使用されておらず、これに対し「保護価値がない」と認定し、また、訴えられた番組の初回放映時期は、当該商標が登録を認可されるより前であったため、本番組は当該登録商標を侵害していないと認定したものであり、革新性を有するものである。