基本的な事件概要:
2018年12月、集佳が代理人を務めた、名称「ジューサーのプレスシリンダー構成部品」の中国実用新案に対し、国家知識産権局に無効審判を請求した。無効審判の理由は以下のとおりである。明細書の開示が不十分であること、請求項が明細書によって裏付けられていないこと、請求項に新規性および進歩性を有さないことなどである。口頭審理を経て、国家知識産権局は2019年6月に無効審判請求の審決を下し、次のように認定した。当業者にとって、本件の技術方案は不明瞭であり、具体的に実施できず、実現できない。したがって、本件の請求項に限定された技術方案は、明細書に十分に開示されておらず、専利法第26条3項の要件を満たさない。 2019年9月、実用新案権者は、上記無効審判請求の審決に対して、北京知識産権法院に審決取消訴訟を提起した。明細書によって「十分に開示されている」か否かの解釈において、無効審判の手続きにおけるものとは全く異なる意見陳述がなされた。開廷審理を経て、北京知識産権法院は、2020年12月に上述の無効審判請求の審決を維持し、原告の訴訟を棄却した。 実用新案権者は、北京知識産権法院の一審判決を不服とした。 また、2021年初めに、最高人民法院に上訴し、明細書が「十分に開示されている」か否かの解釈において、無効審判の手続きおよび第一審訴訟の手続きのいずれとも異なる意見陳述を提出した。最高人民法院は審理を経て、2021年12月、最終的に上訴人の上訴をすべて棄却し、原審判決および審決を維持する決定を下した。
事件の評論と分析:
本件に係る無効審判の手続き、審決取消訴訟の第一審および第二審の手続きにおいて、いずれも問題の焦点は、本件明細書に「ジューサーのジュース排出孔の大きさを調節できる」ことが十分に開示されているか否かに集中した。
本件の最終判決において、最高人民法院は、明細書が十分に開示されているか否かを判断するにあたり、一般的に明細書は本件の重要な改良点を明確かつ完全に記述していなければならないことをより一層明確にした。明細書に具体的な技術的手段が開示されておらず、かつ明確な指針が示されていない場合、当該の重要な改善点の本質的な機能を実現する根拠となる技術常識または当業者の通常の技術手段は、可能な限り相対的に確定されなければならず、当業者の異なる想像力によってさまざまに異なる方法で実現されるべきではなく、特に実用新案権者が、それぞれの手続きにおいて異なる説明にて解釈を行い、その請求項の保護範囲を拡大させることは認められない。