事件の概要:
A社は国内で最も早く新エネルギー自動車の研究開発を開始したイノベーションの主体である。2011年3月、被告の張某はA社に入社し、A社の新エネルギーセンターの常務副主任、センター主任、乗用車設計院副院長などの職務を歴任した。被告の張某は在職期間に、非当事者と共同でA社との間に強い競争関係が存在するB社を設立し、被告の張某は技術を用いて45%を現物出資し、その弟の名義で保有し、利益をちらつかせて中核技術に係る複数名の中堅社員をA社からB社に引き抜いた。2013年12月、張某はA社を離職後、すぐにB社に入社し上級管理職に就いた。僅か1か月前後の期間に、張某は発明者の一人、B社は特許出願人として国家知識産権局に80件以上の特許を出願したが、張某およびB社はA社の技術ノウハウを違法に開示した疑いがあるだけでなく、B社の対外的なビジネス協力プロジェクトにおいてもA社の技術ノウハウを使用した疑いがある。
自己の合法的な権益を守るために、A社はすぐに北京知的財産法院に特許権帰属紛争事件および技術ノウハウ侵害紛争事件の訴訟を提起した。
典型事例の意義:
当該事件は企業の上級管理職の転職を原因とする典型的な知的財産権侵害紛争事件であり、特許権帰属紛争および技術ノウハウ侵害紛争に関係する。本件では、原告は自己がすでに保有している技術の研究開発資料および研究開発過程について積極的に立証し、それに関係する技術情報は営業秘密構成要件に適合した。さらにB社の特許出願方式で公開されている技術情報およびB社が対外的な商業プロジェクトにおいて使用している技術情報とA社の技術情報とを比較することにより、B社に比較的重大な権利侵害の可能性が存在することの一応の証明を行った。B社にその技術の合法的な出所または独自に開発したことを証明する正当な理由がない状況の下で、法院は係争特許権がA社に帰属し、B社の営業秘密侵害行為が成立することを合理的に推定した。