「ジョンディア」商標権侵害および不正競争紛争事件

2022-10-31

  基本情報:

  事件番号:(2016)京73民初93号、(2017)京民終413号

  原告:ディア・アンド・カンパニー、約翰迪爾(中国)投資有限公司

  被告:約翰迪爾(北京)農業機械有限公司、約翰迪爾(丹東)石油化工有限公司、蘭西佳聯迪爾油脂化工有限公司

  事件の経緯:

  ディア・アンド・カンパニーは1837年創業の世界的に有名な農業機械・林業設備メーカーである。同社は1976年に中国市場に参入し、2000年に約翰迪爾(中国)投資有限公司(以下、「約翰迪爾中国公司」)を設立した。ディア・アンド・カンパニーは「JOHN DEERE」、「約翰.迪爾」などのシリーズ商標を所有し、同商標の非独占的使用許諾を約翰迪爾中国公司に与えていた。2原告は、3被告がディア・アンド・カンパニーの登録商標と同一または類似の標章が付された工業用オイルなどの商品を中国で生産、販売し、また工業用オイルなどの商品を指定商品とする「佳聯迪爾」商標を登録し、屋号を「佳聯迪爾」「約翰迪爾」などで登記していることに気が付いた。2原告は、侵害行為で得た利益の3倍で懲罰的損害賠償の金額を算出するよう訴え、3被告に経済的損失500万元などを連帯して賠償するよう命じる判決を下すよう求めた。

  一審法院は、3被告が2原告の商標権を共同侵害していると判断した。賠償金額の算定に関しては、3被告が実施した侵害行為の手段が多様で、同一または類似の商品上に係争商標を使用するだけでなく、ドメイン名登録や屋号登記などの手段で係争商標を使用したり、登録商標の手段で係争商標を複製、模倣、翻訳したりしていたことを考慮した。また、3被告は提携業者の数が非常に多く、遼寧省、黒竜江省、新疆ウイグル自治区、北京市に販売ネットワークを有しており、さらに侵害行為で相当の利益を得ているため、事件記録にある証拠から、3被告の2年間の侵害販売額は1,600万元を超えていると推定した。また、行政処罰を受けた後も引き続き侵害行為位を実施していることから、主観的悪意は明らかで、侵害の情状は重大である。侵害行為で得た利益は、差し押さえた侵害商品の数、関連行政処罰に関する侵害商品の月次販売額、商標権無効審判での侵害商品の月次販売額、2被告の平均販売単価、係争商品の所属業界の平均利益率などの指標を参考に算出した。賠償金額を前述の方法で確定した金額の3倍で計算すると、2原告が主張する500万元を大きく上回った。一審法院は2原告の賠償請求を全額支持した。二審法院は控訴を棄却し、原判決を維持した。

  典型事例の意義:

  本件は懲罰的損害賠償の適用において、故意侵害が存在し情状が重大なケースの典型事件である。被告の継続的な侵害行為は、実施した行為の侵害性を明らかに知っており、しかも行政処罰の決定を無視して侵害行為を継続したことを表すだけでなく、故意侵害と情状の重大さの両要件も備わっており、懲罰的損害賠償の適用要件を満たした事件である。

  (事例出典:北京市高級人民法院)

 

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