蘭州新偉車両装備有限公司(以下、「新偉公司」という)が独自に開発した「重力補償式可動架線(原文:重力補償式移動接触網)」技術(番号:ZL202020583993.0)および関連専利の「動力伝達機構、アーム位置決め装置及び可動架線」(番号:ZL202023195929.4)が被告の蘭州銀利電器設備有限責任公司(以下、「銀利公司」という)により新疆 の3つの主要な鉄道専用線プロジェクトにおいて不正に模倣された。専利権評価報告書における不利な評価、被告による無効審判の請求などの複数の問題に直面し、北京市集佳法律事務所は「技術+法律+戦略」を一体化した多角的なアプローチによって、形勢逆転に成功し、クライアントに重要な勝利をもたらした。
核となる紛争とその解決
本件の初期段階で、国家知識産権局が発行した「実用新案権評価報告書」では本件に係る専利には進歩性がない」と認定され、専利の有効性が直接的に脅かされた。集佳弁護団は依頼を受けた後、不服審査手続きを直ちに開始し、国家知識産権局を説得して評価報告書の訂正を実現し、最終的に当該専利には進歩性がある旨が認定され、後続の権利行使における根本的な障害が取り除かれた。
権利侵害訴訟の審理過程において、被告の銀利公司は国家知識産権局の不服審査・無効審判審理部に対して無効審判を請求した。集佳弁護団は事前にリスクを予見し、能動的に専利の請求項について重要な補正を行い、専利権の有効性を維持するとともに、より厳密な保護範囲を確定した。2件ともに無効審判の審決において、請求項が補正された前提で、専利権の有効性は維持される旨が認定された。
無効審判の審決がまだ下されていない段階であったものの、請求項の保護範囲に変化が生じたことを踏まえ、蘭州市中級人民法院は、被疑侵害製品が専利権ZL202020583993.0の補正後の請求項の保護範囲に該当することから、権利侵害の成立を認定した。
蘭州市中級人民法院は、被疑侵害製品が専利権ZL202023195929.4についても請求項の保護範囲に該当することから、権利侵害の成立を認定した。二審において、銀利公司は無効審判を請求したが、その審決において専利権の有効性は維持され、専利権者が侵害訴訟を引き続き進めるうえでの強力な支えとなった。
また、被告による資産の移転、賠償責任の回避を防止するために、集佳弁護団は訴訟中に蘭州市中級人民法院に財産保全の申立てを行い、被告名義の複数の銀行口座の凍結に成功し、クライアントの正当な権利・利益を最大限に守った。
民事訴訟以外にも、新偉公司は並行して蘭州市知識産権局に専利権侵害に対する行政処分を請求した。集佳弁護団の協力により、行政機関は、銀利公司が製造した可動架線製品は専利権ZL202023195929.4号の保護範囲に完全に該当し、銀利公司の製造、販売行為は専利権侵害を構成すると認定した。最終的に、蘭州市知識産権局は銀利公司に対して権利侵害の即刻停止を命じ、これにより、司法と行政の両面による保護体制が確立され、強い抑止効果を発揮した。
判決のポイント
法院は、被告の製造、販売、販売の申出の行為が専利権侵害を構成することを認定し、権利侵害の即刻停止を命じる判決を下した。また、原告の204万元の経済的賠償の訴えを支するとともに、事情を考慮して16万元余りの合理的な権利保護に要する費用を認めた。本件は鉄道用電化設備分野において「司法と行政の両面からの権利保護に成功した」典型事例であり、企業の知的財産権保護に関する多角的なアプローチの優位性を明確に示している。
業界に対する教訓
本件は、科学技術企業の権利保護にとって模範となる事例である。特許ポートフォリオの観点からは、中核的専利には「請求項による防護壁」を構築し、将来的な補正の余地を確保しておくことが重要である。リスク対応の面では、評価報告書の内容が不利であった場合は、不服審査、無効審判手続きなどを積極的に活用し、局面の転換を図るべきである。訴訟戦略としては、行政処分と民事訴訟の両面から同時並行で進め、権利保護の効率と抑止力の最大化を図る。さらに、事前の財産保全と技術的特徴の精緻な比較を組み合わせることにより、「攻防一体型」の訴訟体制を構築する。