事件の概要
2006年3月、某計測機器企業が有する「内蔵型デジタル表示ターゲット式流量計」に係る実用新案権が年金未納により終了した。国家知識産権局による当該実用新案権の終了を不服として、同社は2017年に北京知的財産権法院に行政訴訟を提起したが、その後2018年に訴えの取下げを申し立て、これが許可された。
2006年5月、当該企業は、2005年に某科学技術企業および某機械企業が生産、販売する製品が当該実用新案権を侵害していることを発見したとして、訴訟を提起した。法院は最終的に、某科学技術企業の行為が実用新案権侵害に当たると判断し、当該企業に対し某計測機器企業への12万5,000元の賠償金の支払いを命じる判決を下した。
その後、某計測機器企業は、某科学技術企業が2006年5月から2010年までの間も当該実用新案権を侵害する製品を大量に生産、販売したことなどを理由に、2015年、2019年、2020年にそれぞれ訴訟を提起し、350万元、450万元、450万元の損害賠償を請求した。このうち、第2回および第3回はいずれも訴訟提起後に取下げを申し立て、第4回については、控訴事件受理費用が納付されなかったため、控訴は取り下げられたものとみなされた。第4回訴訟において、某計測機器企業は財産保全を申し立て、某科学技術企業の450万元相当の財産が凍結された。
某科学技術企業は法院に対して、某計測機器企業が、当該実用新案権が終了したことを明らかに知りながら、第3回および第4回の知的財産権訴訟を悪意により提起したとして、某計測機器企業に対して謝罪ならびに経済的損失および権利行使に要した合理的支出の賠償を命じる判決を求めた。
判決結果
福建省アモイ市中級人民法院は、一審判決で某計測機器企業に対し、某科学技術企業への経済的損失(合理的費用を含む)6万元を賠償するよう命じた。某計測機器企業は、これを不服として控訴した。最高人民法院は二審において、某計測機器企業は、自らが提起した訴訟で主張した権利が法律的根拠を欠くことを明らかに知りながら、第3回および第4回訴訟を提起し、その結果、相手方当事者に損害を与えたものであり、損害の発生について故意があることから、悪意ある訴訟に当たると認定すべきであると判断し、控訴を棄却して原判決を維持した。
典型事例の意義
本件の典型事例としての価値は、次の2点に集約される。第1に、本件は、最高人民法院知的財産権法廷において、悪意ある知的財産権訴訟に該当すると認定された初の事件である点、第2に、本件は、悪意ある訴訟の認定時に考慮すべき最も重要な問題、即ち権利の基礎に関する問題を顕著に示した事件であるという点である。
(出所:最高人民法院「知的財産権の悪意ある訴訟の処理に関する典型事例(二)」)