事件の概要
「FreeClip」イヤホンは華為(ファーウェイ)が長年にわたり、巨額の研究開発資金を投じて全精力を注いで作り上げた逆音波技術、マルチチャネルディ―プニューラルネットワーク(DNN)通話ノイズリダクションアルゴリズム、ヘッドトラッキング技術、IP54耐水耐汗技術、華為が独自に開発した高解像度空間モデルアルゴリズムなど多種類の最新技術とミニマルな幾何学デザインの美しさが融合した革新的な製品であり、2023年12月の海外市場での販売開始から、圧倒的な革新技術および際立った存在感を放つ究極の美というコンセプトにより消費者の心を瞬く間に掴み、全世界で熱狂的なブームを巻き起こし、同類製品の中で最も好調な売れ行きとなり、一躍ヒット商品に躍り出た。
被告の某科技有限公司は華為がイヤホン「FreeClip」を世界で初めて発売した直後に、外観が極めて酷似した「模倣品」のイヤホンを悪意により発売し、さらに、大規模かつ広範囲にわたって、集中的に全販売網の各大型電子商取引プラットフォーム上で、極端な低価格と「有名ブランド、公式ブランドの安価な代替品」「最上位モデルのすべての機能を再現」などの虚偽の宣伝文句により消費者を欺き、消費者に「模倣品」が華為の「FreeClip」と同様に最新技術と機能および究極の美を持つ外観を備えていると思い込ませようとしたが、間もなくして「模倣品」は品質などの問題により多くの消費者からのクレームを受けた。「模倣品」の横行により華為の正規品「FreeClip」のマーケットシェアは大幅に奪われ、わずか3、4か月の間に同社は莫大な経済的損失を被り、さらに正規品「FreeClip」の評判も著しく損なわれた。
華為に速やかに協力して市場を粛正し、「模倣品」イヤホンの短期間での大量出品を禁止し、華為および罪のない消費者の損失を最小限に抑えるために、集佳は迅速に反応し、事件をあらゆる面から検討し、最終的に「FreeClip」イヤホンの応用美術の著作権および特有装飾の請求権について南京市中級人民法院に提訴するとともに、法院に訴訟中財産保全および禁止命令を申し立てることを提案した。
法院の審理および事件の結果
南京市中級法院は本件を積極的に受理し、迅速かつ厳格に「実用性と芸術性を兼ね備えることが可能な造型または設計に対して、当事者は著作権法による保護を選択することができ、また専利法による意匠の保護を選択することもでき、保護の重点はそれぞれ異なる......応用美術の著作物が同時に著作権を取得し、意匠として保護を受けることを認めることにより、意匠権の保護における適用条件、手続き、保護期間、保護範囲などの面での不十分な点を補うことができる」との観点から、本件の権利基盤、権利侵害行為、損害の結果および事件の緊急性に対して十分な審査を行い、速やかに本件に対して財産保全の裁定を下し、「模倣品」イヤホンの全販売網での出品と大々的な販売行為に歯止めをかけた。
また、集佳も専門知識などの優位性を十分に発揮し、法院および原告の業務に積極的に協力し、短期間で当事者双方による権利侵害の停止、損失の賠償に関する包括的な合意を促した。本件は最終的に華為が訴えを取り下げ、「模倣品」イヤホンの市場での販売継続を迅速に禁止することに成功し、華為の正当な権利利益および市場秩序が強力に守られる形で終結した。
事件の意義
本件の最も重要な意義は、法院が知的財産権の十分な保護の観点から、「(応用美術の著作物について)権利者は著作権法による保護または意匠の保護を選択する権利を有する」という判決規則を明確に確認するとともに、法院が「FreeClip」イヤホン製品の全世界での新発売時期と被告の権利侵害時期の間隔が極めて短い、「FreeClip」が最も売れている時期に権利侵害製品が正規品市場に甚大な影響を及ぼしたなどの要素を総合的に考慮した上で、比例原則に則った財産保全の裁定を速やかに下すことにより、「模倣品」イヤホンの蔓延を迅速かつ効果的に抑止し、権利者による新発売の正規品の市場における防衛ラインとマーケットシェアを確実に守る役割を果たしたことにある。