事件の概要
中国郵政儲蓄銀行の前身は1919年に開始した郵便貯金事業まで遡ることができ、現在までに100以上年の歴史を持つ。2007年3月、国務院金融体制改革の全体計画に基づき、国務院の承認を経て、中国郵政儲蓄銀行有限責任公司が正式に開業した。2007年11月、中国郵政儲蓄銀行は、銀行、金融サービス、貯蓄銀行などを指定役務として「」などの商標の登録出願を行い、2010年3月、9月に相次いで登録が許可された。
郵儲肥料公司などは2011年5月に「郵儲肥」などの商標の登録出願を行い、それに続いてさらに「政儲」「郵儲甄好」「郵蓄肥」などの複数の商標の登録出願を行い、長期にわたり自社が生産、販売する化学肥料製品に「郵儲肥」などの商標を使用するとともに、実店舗、ウェブサイトおよび抖音(Douyin)プラットフォームで宣伝と販売を行った。また、製品包装には郵便事業専用の黄緑の配色を用い、包装上および関連の宣伝、普及活動において「郵儲相伴」「郵儲配送」などの宣伝文句を多数使用した。さらに「郵儲」を企業商号として登記、使用し、「youchufeiliao.com」のドメイン登録などを行った。郵儲肥料公司などの上述の商標権侵害および不正競争行為に対して、中国郵政儲蓄銀行は法に基づき徐州市中級人民法院に訴訟を提起した。
法院の判決
徐州市中級人民法院は一審において次の内容を認定した。中国郵政儲蓄銀行の商標「」 「
」「
」は2011年以前にすでに中国国内で関連公衆に広く認知されており、馳名商標(日本の著名商標に相当――訳注)に該当する。郵儲肥料公司、馮某某などが「郵儲肥」「政儲」「郵儲甄好」などの商標について悪意ある登録出願を行い、肥料製品に大量に使用した行為は商標権侵害に該当し、「郵儲」の文字を含む企業名を登記、使用したことは、不正競争行為に該当する。本判決はすでに法的効力が生じている。
本件の意義
集佳は、国の安全と国民経済の命脈を握る国有企業である中国郵政儲蓄銀行に協力し、「」「
」「
」の3件の商標の初めての馳名商標認定を実現し、中国郵政儲蓄銀行の合法的権益を保護しただけでなく、国有企業に便乗した悪意ある商標権侵害行為に重大なダメージを与えることにより、このような悪意ある権利侵害行為によって消費者がさらなる被害を受け、また、公平で信用を重んじる市場競争の秩序が損なわれる事態を防いだ。