集佳法律事務所 弁護士 戴福堂 周丹丹
2004年12月20日、北京市第二中級人民法院(以下「管轄法院」と略称)は「ガム大戦」と称される「ロッテが好麗友を提訴」した不正当競争の案件に一審判決(案件番号:<2004>二中民初字第12016号)を下した。筆者は同案件の原告の訴訟代理人として、同案件の屈折したいくつかの法律問題に対して、簡単に論評する。
一 . 背景資料——案件の状況と判決
管轄法院が調査し明らかにし認定した内容は以下のとおり。
1.原告のガム商品は有名な商品
原告「ロッテ(中国)食品有限公司」は2002年9月より、市場で「ロッテキシリトール無糖ガム」の板ガム状の包装製品を販売し始め、2003年9月よりボトル状製品を販売して以来、原告は上述の製品を推し広め、販売促進し、大量の広告・宣伝を行ない、販売範囲は全国の各大都市に及び、販売数は多く、製品の品質もよく、信頼度が高く、かつ何度も受賞しており、消費者に高い知名度がある。故に、管轄法院では「ロッテキシリトール無糖ガム」を有名な商品と認定した。
2.原告のガムのプラスチックボトルの包装は原告特有の包装ではない。
原告が使用しているプラスチックボトルの形は極普通の形である。被告「好麗友食品有限公司」の証拠では以下のように表明している。原告の製品が発売される前に、すでに同じまたは似たプラスチックボトルが異なる商品において使用されていた。原告はガム製品においては先にプラスチックボトル包装を使用したが、これは必然的に当該包装が特有の包装として成り立つということではなく、当該包装には明らかな違いがあるという特徴がない。故に、管轄法院は当該包装が原告の特有包装だとは認めない。
3.有名な商品の特有包装について。
原告はそのプラスチックの包装ボトルに使用したボトルラベルに原告の商品の特色が現れており、文字、図形、色のどれをとっても原告独自の設計であり、原告の製品の違いの特徴が現れている。故に、有名な商品の特有包装と認定しなければならない。好麗友社のキシリトール無糖ガム製品のプラスチック包装ボトル上のボトルラベルは、細かく比較すると、文字、図形、色において、いずれも原告の製品のプラスチック包装ボトルのラベルにはその違いがあるものの、ラベルが青、白、青の三本の横縞の全体の配置、「木糖醇」等の文字及び粒状ガム等の図形の排列の組み合わせでは、いずれも原告の製品のプラスチック包装のボトルラベルの構成に似ている。
管轄法院の最終判決:「反不正当競争法」第五条第(2)項の規定に基づき、被告はキシリトール無糖ガム」商品を販売するにあたって、この案件に関わるプラスチックボトルの包装の使用を直ちに停止すること。原告の損失、訴訟のための支出の合理的な費用計十万元を賠償する等。
二 . 原告の挙げた証拠は十分で、その訴訟請求に基礎を固める支持を得た。
原告はその案件の商品が有名な商品であることを証明するため、また最終的に「反不正当競争法」の保護を得るために、原告は異なる角度から大量の十分な証拠を挙げた。
1.大量の広告宣伝:原告は新製品の発売記者会見の資料、全国虫歯予防グループと共同で開催した一連の「歯の日キシリトール健康な歯全国巡回展」活動の資料、中央テレビ局を含む全国129のテレビ局で大量に流した「ロッテガム」専門のテレビ広告、広告放送記録資料等を提供した。
2.幅広い販売網:原告は北京以外の十数社の支社、事務所の資料を提供し、中国大陸に幅広い販売網を持っていることを証明した。
3.多い販売量:原告は会計事務所の独立会計審査報告を提出し、販売量を証明した。
4.優良な品質:原告は案件の製品で全国虫歯予防グループの認証を得ている。英国SGSの国際品質規格認証を得ている。
5.高い信頼度:原告はすでに得ている「全国品質信用製品」、「中国ガム市場品質消費者安心第一選択ブランド」等の受賞資料を提出した。
6.高い市場占有率:原告は多くのメディア報道、 AC ニールセン の小売市場調査報告等の資料を提出し、原告の案件に関わる商品の中国での市場占有率が第二位であることを証明した。
筆者が考えるに、原告がこの訴訟のために準備した資料は十分で、系列だっており、筋道だっており、十分な証明力があることを基礎に、この原告の請求で案件に関わる商品は有名な商品であると認定されたことで、管轄法院の支持を得て、法院はこの法定条件の一つを以って、被告に包装面で不正当競争が成立すると最終的に認定した。
三 . 法院が認定していない案件に関わる商品の包装——「ボトル包装」が特有包装であるということに対する疑問。
原告が主張する特有包装とは、ガムという特定製品において使用されたプラスチック「ボトル包装」を指す。中国のガム産業のこの数十年間、国内のガムはずっと銀紙(アルミ箔)で板状の包装をしていた。原告は2003年9月に国内でオリジナリティのあるプラスチックボトルを使用しガムの包装とした。この包装は従来の包装と比較すると、原告は従来の包装の構造と外観において根本的な変革を行ない、オリジナリティを有したことで、原告の案件のボトル製品は明らかに実利的で、携帯・保存に便利となり、他の従来のガム包装と容易に識別でき、視覚的に中国の消費者を震撼させた(以前、中国大陸ではボトルガムを生産・販売したことはなかった)。このようにして、自然と多くの中国の消費者の心中に「ボトルガムはロッテガム」という一種の思考定式が形成された。このことからわかるように、プラスチックボトルはガムの包装として、中国のガム製品での顕著性(または識別力)を有し、原告のガム商品の特有包装であることになる。
本案件において、管轄法院は被告の証拠を支持した。 A 韓国企業が原告の生産・販売前にすでに韓国でプラスチックボトルのガムを販売している。 B 国内の他の非同業企業(例:ボトル包装の「盖天力」カルシウム補給品)が他の非ガム製品において類似したまたは同じボトル包装を使用したことがある。 C 国内の他の同業企業(「如益達」、「華艾康」ガムブランド)が原告の案件の商品が発売された後にこの包装を使用している。法院は上述の被告の証拠反駁に依り、原告のボトル包装は原告の特有包装でないと認定した。
筆者は管轄法院の認定は誤りだと考える。その理由は以下のとおり。
「反不正当競争法」における所謂「包装」とは、商品を識別し携帯や運搬に便利なように商品に使用する補助物や容器を指す。所謂「特有」とは、経営者が単独で使用、または他者に単独使用を授権し、他の経営者の同類商品と区別できることを指す。「特有」の認定は、先に使用するという原則に依り認定しなければならず、「特有」の認定は同一市場での認定に注意しなければならなず、ここには競争関係のあるの同一地域での市場、競争関係のあるの同類商品市場が含まれる。
A 本案件において、被告の証拠について言うと、本案で論争となっている原告・被告の双方が合法的競争であるか否かの問題を中国市場に限定していること、また韓国市場と中国市場とは競争関係にある同一市場ではないことにより、被告が挙げた証拠である韓国企業の韓国市場での販売証拠は、本案件との関連性がない。
B その他の製品(例:ボトル包装「盖天力」カルシウム補給品)はガム製品とは異なる類別に属すので、企業間と製品間には競争関係が存在せず、いかなる比較の可能性もないことになり、本案件には関連性がない。
C 後から同類製品を生産・販売し、類似包装を使用した。但し、特有の認定は先に使用したという原則を以って認定するが、原告が先に案件の商品包装を使用しているので、被告のこの証拠では原告の主張を否定できない。
筆者が考えるに、管轄法院の誤りはここにある。特有包装か否かの認定には、必ず具体的な製品との結びつきが必要であり、そうでなければ包装が特有であるか否かを単独に議論することになってしまう。それ自身は根本的なロジックの誤った問題であり、何の意義もない。さらに『反不正当競争法』の立法の本意(有名な商品を保護)に合致しない。管轄法院のロジックに従うと、新発明のいかなる商品にも使用したことのない包装のみを特有包装と呼ぶことになってしまい、これは明らかに『反不正当競争法』が解決する必要のある問題ではなくなってしまう。
( 本文の案件の状況は当事者情報が含まれ、すべて北京市第二中級人民法院<2004>二中民初字第12016号『民事判決書』にて公開されたものである )