(1)事件概要
深セン市珂莱蒂爾服飾有限公司は第9、14、18、24、25類商標「KORADIOR」の商標異議申立不服審判の裁定について北京市集佳弁護士事務所に行政訴訟の提起を依頼した。係争裁定に関する法的根拠はいずれも改正前の「商標法」第28条であり、すなわち同一または類似の商品上で、被異議申立商標「KORADIOR」と引用商標「Dior」が商標法上の類似関係にあるか否かである。
その中で、第18類商標異議申立ての不服審判に係る審決取消訴訟事件において、北京市高級人民法院は被異議申立商標「KORADIOR」と引用商標「Dior」の商標上の類似関係を認定した。北京市第一中級人民法院は第25類事件の審理時に北京市高級人民法院の発効判決を直接引用し、両者の商標法上の類似関係を認定した。集佳の弁護士は評価を経て、依頼人に二審を放棄するよう提言した。しかし、第9、14、24類の事件においては、弁護士が係争の指定商品上での引用商標の知名度が比較的低いと判断したため、積極的に応訴して自身の合法的な権益を擁護することを依頼人に提言した。最終的に、第9、14、24類では勝訴を勝ち取り、深セン市珂莱蒂爾服飾有限公司の合法的な権益が十分に擁護される結果を得た。また、その中で(2015)京知行初字第414号事件が北京知識産権法院公表の2016年度典型事例62件に選出された。
(2)争点
本案の争点は係争商標の登録出願が同種または類似の商品上で使用される類似商標の関係にあるか否かにある。原告の珂莱蒂爾公司と第三者のDior社は本案において個別に北京市高級人民法院による発効した過去の判例を計2件提出し、合議体は本案と上述の判例に係る状況との相違点および共通点を具体的に分析し、その前提の下で、選択的引用方式により先例を引用し、判決を下した。
(3)判決要旨
係争商標および引用商標1、2、3、4、5は文字の構成、配列、読み方および視覚的効果などの面でいずれも相違点が見られる。事件証拠も各引用商標が係争商標の登録出願前に、その指定商品であるフェルト、布地、ハンカチ、シーツ、テーブルクロスなどにおいて一定の知名度があったと証明することはできない。したがって、係争商標と各引用商標は類似を構成せず、係争商標と各引用商標が同一または類似の商品上で使用されたとしても、関連公衆の混同を生じさせるに不十分である。したがって、係争商標の登録出願は2001年商標法第28条の規定に違反しない。このため、北京知識産権法院は係争裁定を取り消し、被告に改めて裁定を下すようを命じる判決を下した。
(4)典型事例の意義
当事者が提出した2件の発効した過去の判例で同一の争点について異なる認定が行われた理由は、類似商標を判断するにあたり、商標の表示の構成要素およびその全体的な類似の程度を考慮するだけでなく、引用商標について指定商品における知名度も考慮しなければならないという点にある。885号判決で商標「KORADIOR」、商標「Dior」などの類似関係が認定されたことは、まさに事件証拠によりハンドバッグなどの商品上で使用されている「Dior」などの商標が中国大陸地域では極めて高い知名度を有していることの証明が可能であることが考慮されたものである。したがって、515号判決と885号判決は、結論は異なるものの、実質的に適用された類似商標の判断に関する基準は一致する。したがって、係争商標と引用商標が類似の関係にあるか否かを判断するにあたり、上述の発効した過去の判例の関連の認定内容を機械的に引用してはならず、上述の発効した過去の判例の一致する判断基準に従って、本案の実情を踏まえて判断を下さなければならない。