2016年9月14日、集佳弁護士事務所は、原告・天津兆華物流有限公司に、中車斉斉哈爾車両有限公司、中車斉斉哈爾交通装備有限公司大連コンテナ支社、欽州北港物流有限公司の特許侵害に対する訴えの取下げに対し、取下げを許可する旨の民事裁定書を成都市中級人民法院より受け取った。これをもって中国初の「アスファルトローリー」専利侵害紛争は終止符を打った。
案件概略
原告・天津兆華物流有限公司と被告である中車斉斉哈爾車両有限公司、中車斉斉哈爾交通装備有限公司大連コンテナ支社、欽州北港物流有限公司の実用新案権侵害紛争案件で、被告は2015年12月25日、四川省成都市中級人民法院から送達された応訴通知書を受け取った。案件番号:(2015)成知民初字第868号。
集佳弁護士事務所は直ちに被告より本件処理の依頼を受け、李洪江弁護士、孫長龍弁護士、戈暁美弁護士、武樹辰弁護士を任命して「中車斉軌道専門権益保護チーム」を編成して、原告の提訴手続き、証拠資料を専門の立場から分析を行い、入念に精読し、さらに「事件の事実」を自ら検査し、最終的に「本事件は四川省成都市中級人民法院に管轄権はなく、管轄権を有する広西南寧市中級人民法院に移送し、当該法院で管轄するべきである」との結論を導き出した。
集佳弁護士事務所は三被告を代理して、第一審法院に管轄権異議申立てを同時に提起した。その理由は次の通りである。原告が提供する証拠には、荷送人である欽州北港物流有限公司が鉄道輸送の方式を使用して依頼人(荷受人)である青白江国家食料備蓄庫(南粮)が自ら積み込んだ(積載輸送費無料)アスファルトが積載されたコンテナ(番号:TBGU5204017、TBGU5204022)2本を広西自治区欽州港から成都青白江区まで輸送したことを示している。以上からわかるように、荷送人の欽州北港物流有限公司は被疑侵害製品「アスファルトコンテナ」を使用しておらず、また鉄道列車は輸送手段であり、被疑侵害製品「アスファルトコンテナ」は荷送人の欽州北港物流有限公司の輸送対象物であるに過ぎない。つまり、被疑侵害製品「アスファルトコンテナ」を実際に使用している使用者は訴外、青白江国家食料備蓄庫(南粮)である。青白江国家食料備蓄庫(南粮)は本事件の当事者ではなく、原告は青白江国家食料備蓄庫(南粮)に対する訴権を放棄している。そのため、その住所地を管轄地とすることはできない。
管轄権異議申立ての第一審は勝訴
2016年4月22日、成都中級人民法院は管轄権異議申立ての民事裁定書を発行し、次のとおり認定した。被告の住所地および侵害行為地から管轄地を判定する原則に基づくと、本案件では三被告の住所地はいずれもて四川省ではなく、また被疑侵害行為について、原告は自身の主張する製造、販売、使用行為が四川省で発生していることを証明しておらず、上述の侵害行為の結果が四川省内で発生していることはなおさら証明できていない。故に、本法院は本案件に対する管轄権を有さない。原告が提供した証拠に基づき、本法院は、四川省成都市青白江区は上述の「アスファルト」貨物の荷受地であり、上述の貨物を搭載した被疑侵害製品「アスファルトローリー」として、そのコンテナの特徴から輸送計画の違いに伴い随時保存場所が変わるため、四川省成都市青白江区、即ち荷受地を使用行為地と認定した場合、管轄連結点の確定が恣意的になりすぎ、管轄制度制定の本意に反すると考えられる。また、本案件の被疑侵害製品の特性に基づき、事実を究明して、紛争解決に便宜を図るという観点から、被疑侵害行為地に対し、被告住所地は本案紛争により実際の関係性がある。これにより、本法院は広西南寧市中級人民法院に移送して審理することを決定する。
無効報復の効果がすぐに出る
原告は起訴状の中で三被告は共同で3件の実用新案、201420382310.X(加熱管を備えたコンテナ)、201420594181.0(内加熱管を有する容器)、201220323220.4(アンローディング機構と該アンローディング機構を有する容器)を侵害していると主張した。上述の三つの専利の保護範囲が過度に広範囲にわたっていることを考慮し、集佳は依頼人に協力して専利無効審判を請求した。
2016年5月31日、国家知識産権局専利復審委員会は、進歩性を理由に本案の専利201220323220.4の全部無効の審決を下した。
2016年7月22日、国家知識産権局専利復審委員会は進歩性を理由に当案件に関係する特許201420382310.Xの一部無効の審決を下したが、合議体は最終的に次のように認定した。請求項1は「前記加熱管は前記コンテナ本体の床部分に平行に設置し、前記床板には接触しない」と限定しているが、本専利明細書は「床板」について明確な意味を限定している。このような明確な定義は専利権者が保護を求める技術方案に対する真実の意思表示であり、この確定的な定義を通じて床板の保護範囲の境界が明確に定められており、加熱管を内ボックスの床板上に設置するという技術方案を明確に排除している。そのため、該特許の保護範囲と被疑侵害製品の技術方案は完全に異なっている。
2016年7月26日、国家知識産権局専利復審委員会は進歩性を理由に当案件に関係する専利201420594181.0の全部無効の審決を下した。
最終的に原告は上述三被告への訴えを取り下げた。
本案の典型的意義
本案件は全国初の「アスファルトローリー」に関する専利侵害事件であり、「アスファルトローリー」分野の技術発展の指針と牽引に対する画期的な意義を有している。また、管轄権に対する異議申立制度の有効な利用により、当事者の貴重な時間を節約し、無効審判手続きにおける先行技術の検索結果を獲得するという点で模範的な意義を有する。