集佳の弁護士が代理した「永久磁石の浮上技術」の特許権侵害訴訟で勝訴

2017-01-04

   事件の概要

   「磁気浮上技術」は「同極は反発し、異極は引き合う」という特性をうまく利用した、磁力によって重力を克服し、物体を浮上させる技術である。現在全部で3種類の「磁気浮上技術」があると言われている。第1に、ドイツに代表される「常電導磁気浮上」技術が、第2に、日本に代表される「超電導磁気浮上技術」がある。この2種類の磁気浮上はいずれも電力を用いて動力を生み出す必要がある。しかし、第3の、即ち中国の永久磁石浮上技術は、特殊な永久磁石材料を利用し、他のいかなる動力も必要としない。

   広東省肇慶市衡芸実業有限公司(以下、「原告」)は特許番号200610065336.1の特許を取得し、それぞれ全国規模で10余件の特許権利保護訴訟を展開して勝訴を勝ち取ってきた。

   2015年7月27日、原告は杭州市中級人民法院に対し、深セン市宏鑫拓普電子科技有限公司(被告)がアリババプラットフォーム、T-mall(天猫)において被疑侵害製品を大量に販売したとして、50万人民元および権利保護に要した合理的費用の賠償を請求する訴えを起こした。

   アリババ社は次のように弁明した。(1)アリババはインターネットサービスを提供する企業であり、「侵権責任法(権利侵害責任法)」第36条第2項の規定に基づき免責されるべきである。(2)原告が発送した弁護士書簡において被告である売り手が特許権を侵害したことを証明していない。(3)特に、係争特許は内部構造の特許に属し、被告である売り手は写真をアップロードしただけで、アリババは権利侵害の審査基準を備えていないため、権利侵害か否かを判断することはできない。

   被告は北京市集佳律師事務所の武樹辰弁護士、李洪江弁護士に出廷、応訴を依頼し、次の4点について抗弁した。(1)CN729614Aの先行技術について抗弁する。(2)禁反言の原則について抗弁する。その理由は、無効審判の手続きにおいて、原告は特許権者として、意見陳述において係争特許の請求項の保護範囲を自発的に縮小したからである。すなわち、「当該磁気浮上体は電磁誘導浮上体ではなく、永久磁石浮上体である」としている。(3)請求項の保護範囲の解釈は「一つの環状永久磁石」に限定されるべきである。係争特許は「含む」とする開放式請求項が用いられ、その技術方案を限定しているものの、「開放式請求項について」は請求項1における「単一磁性、一つの環状永久磁石を含む」を「一つまたは複数の磁性、環状永久磁石」と解釈するということを意味するのではない。実際に、請求項1は「単一磁性、一つの環状永久磁石」を限定するだけでなく、「該環状永久磁石上の環状の表面の磁性と前記の磁気浮上体の下の磁性の端の磁性の反発」も限定している。もし「単一磁性、一つの環状永久磁石」を「一つ又は複数の」と理解したなら、「多くの環状永久磁石上の環状の表面の磁性と前記複数の磁気浮上体の下の磁性の端の磁性の反発」が現れるが、これらの技術方案は係争特許の明細書および図面に記載されていないだけでなく、技術的特徴における相互矛盾の状況が現れる。このため、「一つの環状永久磁石」について「一つまたは複数を含む」と解釈するべきであるという理解は支持できない。(4)請求項1における「浮上体水平運動制御装置は前記台座内に設けられ、前記台座の上方に浮上する前記磁気浮上体が水平方向において前記の基準位置を離れるとき、前記磁気浮上体を制御し、前記基準位置に戻るよう制御する」という技術的特徴は、「機能的限定」であり、「司法解釈1」第4条の規定に基づき、明細書と図面の描写による該機能または効果の具体的な実施形態およびそれと同等の実施形態を組み合わせて、当該技術的特徴の内容を確定すべきである。

   係争特許の明細書には唯一の「具体的な実施形態」が記述されている。すなわち、浮上体水平運動制御装置は以下を含む。①帯鉄芯の4つのコイル31、32、33、34。②4つのホール素子センサー(磁性センサー)51、52、53、54。2組に分かれそれぞれ2組のコイルを制御する。さらに、浮上体のX、Y方向の自由な移動を制御する。③台座内に制御回路板6が設けられ、完全に同一で相対し独立した制御回路12からなる。④制御回路12も具体的な実施形態が一つのみが記述されており、センサーの電圧が減算回路8に接続し(電圧値の測定)、増幅回路9(シグナルの増幅)を経て、減算回路10の基準電圧U0と比較を行い、増幅回路まで出力する。出力電圧が0でないとき、励磁電流の調整を行う。以下の図のとおりである。  

   しかし、提訴された被疑侵害製品の技術方案については、原告が自身の「立証責任」(司法鑑定)の行使を怠った前提において、根本的に比較照合の対象がない。

   コメント:

   2016年8月24日、杭州市中級人民法院は次のとおり一審判決を言い渡した。原告の訴訟請求をすべて却下する。案件受理費は、原告がすべて負担するものとする。具体的理由は次の通りである。特許侵害訴訟において、原告は特許侵害の事実の成立を証明する立証責任を負うべきであるが、被疑侵害製品が原告の主張する請求項に記載されたすべての技術的特徴と同一または同等の技術的特徴を有することが特許侵害の事実成立の前提である。原告は鑑定費用が高額であるとして「司法鑑定申請」を自発的に撤回し、「専門家の補助員」の申請を撤回したことにより、機能的限定の技術的特徴において一つひとつ比較照合を行うことができないという前提において、被疑侵害製品が係争特許の保護範囲に入るか否かを判定することはできない。以上により、原告の同一の特許侵害の主張は成立しない。

 

相关关键词