集佳が代理した商標「善行者 One Step One Changeおよび図」の 拒絶査定不服審判

2017-09-01

  「善行者」は中国扶貧基金会が2014年に立ち上げたウォーキング募金活動の名称で、国務院貧困者支援開発指導グループ弁公室がその指導に当たり、中国扶貧基金会および昌平区人民政府が主催者、北京交通広播(北京ラジオ局交通チャンネル)が共催者、電影チャンネル(CCTV6)、中央人民広播電台(中央人民ラジオ局)が支援団体となっている。知的財産権方面での保護を強化するため、中国扶貧基金会は2015年11月13日に商標局に対し第36類「慈善基金の募集、受託管理」を指定役務として第18325062号商標「善行者 ONE STEP ONE CHANGEおよび図」の登録出願を行った。しかし、河北省善行使者公益協会が先行登録した第12326011号商標「善行使者」が存在していたため、商標局は「慈善基金の募集」を指定役務とする本件商標の登録を拒絶した。

  中国扶貧基金会は拒絶査定を不服として、商標評審委員会に対し拒絶査定不服審判を請求し、商標「善行者 ONE STEP ONE CHANGEおよび図」と商標「善行使者」は類似しない旨を主張した。商標評審委員会は審理を経て、出願商標と引用商標は含意および全体の外観において一定の差異があり、かつ出願商標は中国扶貧基金会による広範囲に及ぶ宣伝と使用を通じて、実際の使用においてすでに中国扶貧基金会と対応関係が生じており、引用商標とは相互に区別することができ、関連公衆に誤認・混同を生じさせるまでには至らないことが提出された証拠によって証明されたと判断し、審判に係る指定役務における当該出願商標の初期査定公告を最終的に決定した。当該決定はすでに発効し、出願商標は2017年7月7日に登録が許可された。

  本件は、出願商標が拒絶された「慈善基金の募集」と引用商標の指定役務「慈善基金の募集」が同一であり、この点は疑う余地がない。したがって、本件の争点は商標の類似性の有無にある。本件の争点をめぐり、当事務所は中国扶貧基金会の代理人として、出願商標と引用商標の全体的な外観、文字の構成、呼称の発音、含意の各方面において明らかな差異があることを重点的に説明した。全体の外観において、出願商標は「善行者+ONE STEP ONE CHANGE+図形」が一体として組み合わさったものであり、その全体こそが出願商標の顕著な識別標識であり、引用商標である「善行使者」という純粋に漢字からなる標識とは、その全体をもって比較しなければならない。含意においては、出願商標の漢字は「善行者」という3つで構成されている。これは「善行」と「行者」を組み合わせたものであり、「公益徒歩活動」というブランド趣旨を十分に表現している。また、英文「ONE STEP ONE CHANGE」は「一歩一歩が変化をもたらす」ことを表すものであり、出願商標は事実上、中国扶貧基金会が2014年に発起したウォーキング募金活動に由来する。一方、引用商標「善行使者」は河北省精神文明建設委員会弁公室、河北省志願服務指導委員会弁公室が主催者、河北省善行使者公益協会が運営者、河北省志願服務基金会が共催者である公益活動であって、その活動形式は11の省轄市(省または自治区の地級市――訳注)で貧困学生、障碍者、高齢者、孤児に資金援助を行うこと、農村の子どもたちに素敵な「授業」を届けるというテーマで就学援助活動を展開すること、公益小学校(支援により建てられる小学校――訳注)の建設を支援すること、養老院・孤児院を建設すること、「善行使者·革命の地へ」などの活動を手配し実行することである。したがって、出願商標と引用商標の差異は大きく、標章そのものが類似しない。

  また、出願商標が2014年以降の多数の宣伝活動に使用された証拠も併せて提出し、これらの証拠により、「善行者」の活動が社会からの大きな反響を得ており、当該商標と中国扶貧基金会とが一意対応の関係にあることを示した。上記の理由と証拠はいずれも商標評審委員会に認められた。

  典型的意義

  商標審査基準では、「中国語商標が3つ又はそれ以上の漢字で構成され、単に個別の漢字が異なり、全体として含意が無く又は含意に明瞭な差異が無く、関連公衆に商品又は役務の出所について容易に誤認を生じさせるものは、類似商標であると判定する」と規定されており、出願商標は上記の基準に基づいて引用商標と構成が類似すると判定される。しかし、出願商標は知名度が高く、影響力が広範にわたり、かつ多くの政府部門の公益プロジェクトにかかわっており、登録できなければ、社会公益事業に重大な不利の影響を及ぼすことになる。さらに、「善行」は、公益事業にいて常用される語彙であり、多くの公益団体がこれをブランド名称または活動名称として使用し、その顕著性は低く、かつ強い排他性を有しない。したがって、全体から商標の類似性を把握し、関連商標の知名度を総合的に勘案することは、このような類型の事例を解決する上で順守すべき原則となる。出願商標と引用商標は標章自体に大きな差異があり、出願商標は長期の宣伝・使用を通じてすでに大きな影響力を有する状況にある状況下では、出願商標と引用商標の共存が関連公衆に混同・誤認を生じさせることはない。したがって、登録を認めるべきである。

 

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