事件の概要:
集佳が代理人を務めた王連喜氏の2件の漢方製剤専利権帰属紛争事件は、管轄法院が事件を受理した日から、一審の勝訴判決を勝ち取るまで、丸3年を費やした。その間、法院が開廷した回数は計6度に及んだ。筆跡鑑定の必要があることから、山西省臨汾市曲沃県人民法院に赴き、関連の筆跡検査資料を取得した。専利権帰属紛争事件の特殊性を考慮して、係争専利の中断手続きを何度も申請、延長した。先ごろ、われわれは(2015)京知民初1929、1930号の2部のずっしりと重い一審判決書を受け取った。被告の専利権の譲渡行為に対する無効が認定され、事件に係る2件の漢方製剤の専利権は原告である王連喜氏の所有となった。孫長龍弁護士、劉磊弁護士からなる弁護士団は真摯で責任感のある姿勢および専門性が高く謹厳な業務により、依頼者の合法的権益を十分に保護した。
判決:
審理を経て、管轄法院は次の内容を認定する旨の判決を下した。一.2件の係争特許について2008年5月9日に王連喜が史長山に譲渡し、2010年5月20日に史長山が山西旺龍薬業有限公司に譲渡し、2011年5月30日に山西旺龍薬業有限公司(つまり山西旺龍神農薬業有限公司)が山西旺龍薬業集団有限公司に譲渡した行為は無効であることを確認する。二.2件の係争特許は原告である王連喜の所有とする。三.原告が訴訟に要した適正な支出である10万元は被告が共同で賠償することを支持する。
典型的意義:
本件の審理期間は長く、開廷回数が多く、双方間の意見の相違が大きく、また、管轄法院に難題を突きつけた事件であり、とりわけ事件の証拠の中に変更合意書と譲渡契約書が同時に存在する状況の下で、人民法院の判決は公平正義を根本原則とする司法審判の知恵を十分に具現化した内容である。
本件において、われわれが注目に値すると考える点は次のとおりである。
1.係争専利権の譲渡行為が無効であるか否かについて
本件において、係争専利権が2008年5月9日に認可を経て王連喜氏から史長山に譲渡されたことを示す根拠は史長山側が譲受人として国家知識産権局に記載事項変更申告書および事件に係る変更合意書の提出であり、第1号鑑定意見では事件に係る変更合意書の「王連喜」の署名はその本人が記入したものではないことが認定され、同時に王連喜氏が他人に代筆を委託したことを証明する証拠もないことから、係争専利権が2008年5月9日に王連喜氏から史長山に譲渡されたことは王連喜氏の真の意思表示ではなく、王連喜氏の当該譲渡行為に対する無効確認請求には、法的根拠があり、法院はこれを支持した。証人である王建輝氏の陳述によると、専利局に赴き、専利権を変更することについて、蔡泉泉は王連喜氏に話したことがあり、王連喜氏はこのことを知っていたとしているが、当該陳述は伝聞証拠で、その他の証拠による証明がない状況の下で、信用することは困難であるとして、法院はこれを採用しなかった。
2.被告が法廷審理において提出した専利権譲渡契約について
本件の最大の疑問点および難点は、原告と被告の間でいわゆる専利権譲渡契約が締結されていれば、被告の史長山は専利権変更手続きの過程において、譲渡契約を持って国家知識産権局で手続きを行えばよいことであり、王連喜氏の署名および変更合意書を偽造する必要はまったくなく、変更を完了することができる点にある。本件の判決では巧みに真の意思表示の実態、つまり変更行為が王連喜氏の真の意思表示を本当に具現化したものであるか否かに重点が置かれている。専利権譲渡契約については、確かに存在しているが、履行条件がいまだ成就していない状況下で、史長山が不法な手段により専利権を譲渡した行為も決して王連喜氏の真の意思表示ではない。
3.後続の専利権の譲渡行為に善意取得を適用するか否かについて
本件において、史長山が2008年5月9日に係争専利権を譲り受けた行為は無効であることからも、史長山は係争専利に対する処分権を有しておらず、史長山が2010年5月20日に係争専利権を山西旺龍公司(その後旺龍神農公司に改名)に譲渡した行為は権限なき処分行為に該当し、王連喜氏の追認の意思表示がなく、史長山も処分権を取得することができない状況にあっては、史長山と山西旺龍公司の間の譲渡契約は無効としなければならず、同様に、山西旺龍公司(つまり旺龍神農公司)と旺龍集団公司の間の譲渡契約も無効である。