事件の背景:
株式会社LG生活健康は世界的に有名な化粧品会社であり、その「后Whoo )」ブランドの口紅「拱辰享美奢冠鎏金唇膏」は発売と同時に女性の間で大人気となった。
本意匠は口紅の容器であり、管体と蓋体の2つの部分に分かれる。本意匠は2017年6月6日に出願され、権利付与公告日は2017年12月15日、優先日は2017年5月24日である。
正面図 分解状態図
今回の権利侵害係争対象物は広州奥希尼化粧品有限公司(以下、奥希尼公司と称す。)のTUTUブランドの口紅である。奥希尼公司は傘下にHOLDLIVE、TUTU、NYNなどのコスメブランドを多数抱えている。
本特許製品の名称は口紅容器であり、用途は化粧品などの各種物品の収容である。一方、係争対象物は口紅で、両者はいずれも国際意匠分類表の28―02類に属し、同一の種類の製品である。
本意匠の評価報告により、本意匠は意匠権評価報告の調査で得られた引用意匠1および他の従来意匠と比較して、主に次のような違いがあることがわかる。(1)管体の形状、即ち本意匠の管体は弾頭の形をしており、従来意匠の管体とは明らかに形状が異なり、本意匠の進歩性を有する設計要点を構成している。(2)蓋体の形状と模様、即ち本意匠の蓋体と従来意匠の差異は、主に円柱型の上部と、断面の台形の2脚が内側にカーブしている下部との組合せにあり、上部は透かし彫り模様があり、下部は滑らかで模様がない。
比較対照の結果、係争対象物の意匠と本意匠の間には確かに次のような2つの差異がある。(1)蓋体の透かし彫りの具体的な模様が多少異なる。(2)先端部の穴にリップブラシが接続されているか否か。
しかし、実際のところ、上記(1)の差異は一般消費者には気づきにくい軽微な差異に属し、全体の視覚効果に明らかな影響を与えるものではない。その主な理由として、第1に上記差異は通常の設計方法に属し、明らかな視覚効果を生じていない。第2に本意匠の製品は設計空間が大きく、上記差異は一般消費者にはわかりにくい微小な差異に属し、総じて模様の占める割合が比較的小さく、容易に一般消費者の注意を引くものではない。
上述(2)の差異は、特別に追加された意匠上の特徴であり、本意匠の保護範囲に属さないことから、権利侵害の比較対照に入れるべきではなく、しかも(2)の差異はリップブラシに関するものであり、機能的特徴に属することから、本意匠の保護範囲から除外されるべきである。
こうした観点から、係争対象物の意匠は本意匠の保護範囲に入り、被疑侵害行為は意匠権の侵害を構成する。これにより、LG生活健康は集佳に依頼し、奥西尼公司に対し「口紅容器」の意匠を侵害したとして訴訟を提起した。
法院の判決:
先日、広州知識産権法院は本件について一審判決を下し、奥希尼公司が製造、販売する係争対象物の意匠がLG生活健康の本件意匠権の保護範囲に入るとするLG生活健康の主張を認めるとともに、奥希尼公司に対し、経済的損失20万元をLG生活健康に支払うよう命じる判決を下した。