事件の概要:
申立人・広東小天才科技有限公司は2019年7月5日に名称を「電話ウォッチ(Z6)」とする意匠権(専利番号ZL201930053063.7)を取得した。2019年7月9日に「カメラ機能を有するスマートウェアラブルデバイス」という名称の実用新案権(専利番号ZL201821610111.4)を取得した。上記専利権は、申立人が権利侵害紛争処理の申立てを提起した時点でいずれも適法的かつ有効であった。2020年8月14日、重慶市知識産権局が法に基づいて立件した。
申立人は、被申立人の重慶読書郎公司が申立人の販売許諾の許可を得ずに係争製品の販売の申出、販売を行い、申立人の合法的権益を損害したと主張した。申立人は、ZL201821610111.4号専利請求項7の技術的解決手段とZL201930053063.7号専利の意匠1を申立の権利根拠とし、係争製品の販売の申出、販売を直ちに停止するよう被申立人に命じるよう申立てた。
被申立人は、「係争専利は先行意匠に属し、被申立人は係争製品の代理販売業者に過ぎず、係争製品に紛争が存在するのを知らず、かつ正しく合法的な仕入先があり、申立人の処理申立は法に基づいて却下しなければならない」と弁明した。
審理の結果、重慶市知識産権局は2020年12月10日に専利権侵害紛争の行政裁決を下し、被申立人の合法的な仕入先があるという抗弁は成立せず、その係争製品の販売の申出、販売行為は権利侵害行為を構成すると認定し、当該侵害行為の停止を同社に命じた。
典型事例の意義:
本件の典型的意義は主に次の4点にある。第一に、専利権者が実用新案権と意匠権を共同挙証することで権利侵害の事実を主張し、権利侵害事実の認定において技術の複雑さと難易度が高い。第二に、被申立人の販売の申出、販売行為が実用新案権、意匠権を侵害しているか否かの確認し、製品が合法的な仕入先を経るか否かの判断について、証拠は必ず正確かつ詳細でなければならない。第三に、行政裁決は専利紛争を迅速かつ効率的に処理する有効な手段であり、専利紛争における技術的事実、証拠の合法性の認定は専利侵害行政裁決業務の重点である。第四に、本件の専利権者が広東省の企業であり、被申立人が重慶の企業であることから、重慶知識産権局は事件処理のプロセスにおいて、厳格に手続きに従い、事実に基づいて事件を処理し、公正な裁決を下した。これは習近平総書記が中央政治局第25回グループ学習の際に述べた知的財産権活動に関する協調メカニズムの強化についての講話を実行に移し、地方保護主義を決然と克服することに関する要求事項の遂行であり、知的財産権の地域横断的共同保護を強化する見本である。(中国知識産権研究会副秘書長(業務主管)謝小勇)