海外OEMにおける商標権紛争の「攻防」

2022-12-19

  先日、集佳が代理人を務めた、商標権の非侵害確認および知的財産権の税関保護措置申請による損害賠償責任に関する紛争について、上海浦東新区人民法院で行われた調停が成立した。この紛争において、集佳は税関による差押えと民事訴訟の両段階に介入し、海外OEM受託者が紛争において守りから攻めへ、受動から主動へと転じることを支援し、最終的にその訴えを実現させた。

  税関による差押えの段階

  攻め ► 国内の商標所有者

  守り ► 海外のOEM受託者(集佳が代理人を務める)

  一.税関段階の事件の経緯

  2021年、江蘇省のS社(仮名)は上海税関に対し、一般貿易方式による照明器具の輸出を申告した。Y社(仮名)は、当該照明器具が、税関総署に登録されている商標権を侵害している疑いがあるとして税関による差押えを申請し、保証金を納付した。貨物の差押えを受け、S社は集佳に支援を求めた。

  資料を読み、S社と連絡を取り合った結果、弁護士は、差し押さえられた商品はすべて海外OEMの形であることを知った。すなわち、国内のS社は海外の商標権者であるチリの会社の委託を受けて関連の照明器具を生産し、かつその書面による授権に従って、チリの会社から提供された商標を製品および外装に付し、製造した照明器具はすべてチリに輸出し、中国国内で販売することはなかった。

  二.対応戦略

  このような税関による差押さえの事件を取扱った経験によると、海外OEMの貨物については、輸出貨物が海外OEMである理由を輸出者が明確に述べることができ、かつ、国外の加工委託者が、到着国での商標登録証書、国内の受託加工者への商標授権書などの資料を提供できる場合、税関は一般的に、権利侵害の有無を認定できないと判断する。弁護士は、S社のために「非侵害状況説明書」を作成し、関連証拠を税関に提出した。最終的に、上海税関は、権利侵害の有無を認定できないとする「輸出入貨物の知的財産権状況通知書」を発行した。

  民事訴訟段階

  攻め►海外のOEM受託者(集佳が代理人を務める)

  守り►国内の商標所有者

  訴訟段階の事件の経緯

  弁護士は、事件の事実関係を整理する過程で、チリの会社がチリやペルーなどの南米諸国で関連商標をかなり以前に登録しており、かつ、中国で委託加工を行っており、Y社の国内登録商標には明らかに模倣の痕跡が存在することに気が付いた。Y社名義の商標データを確認すると、他にも南米の有名照明メーカーの商標と類似した商標を登録していることがわかった。

  二.攻撃戦略

  関係規定によると、税関は拘留した貨物が知的財産権を侵害しているか否かを認定できない場合、差押え申請者が貨物の即時通関許可を確認しない限り、差押えした日から50営業日待たなければならず、法院の執行協力通知を受けていない状況でないと通関は許可されない。差押えまでの手続きの時間と合わせて、ひとたび貨物が差し押さえられると、納期が大幅に遅れることになる。また、S社は今後もチリの会社のOEMを継続する可能性がある。一方、税関の差押さえはS社に損失をもたらすことにもなり、S社はその損失を補填する必要があった。

  このため、S社は、集佳の弁護士と協議した結果、守りから攻めに転じることにし、商標権の非侵害確認訴訟、および知的財産権の税関保護措置の申請による損害賠償責任に関する紛争訴訟を主動的に提起することで、輸出貨物の法的状況が不明であるという現状を解消し、さらに損失を補填することにした。弁護士は、本件に対して多層的な攻撃戦略を立案した。

  (一)商標権の非侵害確認に関する紛争

  1.「海外OEMを盾とする

  訴訟段階では、原告はまず、輸出した貨物は海外OEMであり、被告の登録商標の専用権を侵害するものではない旨を継続的に主張した。

  2.「先行権利」と「権利の濫用」を矛とする

  最高人民法院による「HONDA事件」の再審判決以降、海外OEMに対する司法見解がいくらか変化し、国内受託者が権利侵害をしているか否かに対する判断の一定の不確実性が増している。原告の主張を補強するために、原告側弁護士は先行権利と権利濫用の観点から次のように主張を強化した。すなわち、被告の国内登録商標の図形部分は、チリの会社が先に著作権を有する著作物であり、文字部分はチリの会社が先に使用した商号と一致するものであり、チリの会社が先行権利を有すると主張した。信義則および最高人民法院第82号指導事例で確定した裁判要点に基づき、原告は商標権侵害を構成しないだけでなく、被告は権利濫用を構成すると判断した。

  3.財産保全を切り札とする

  立件と同時に、原告は、財産保全手続を開始し、法院は被告の銀行預金の一部および税関に納めた保証金を凍結する判決を下した。

  (二)知的財産権の税関保護措置の申請による損害賠償責任に関する紛争

  知的財産権の税関保護措置の申請に関する損害賠償の責任帰属の原則は、司法実務において議論が存在している。《知的財産権税関保護条例》第14条は、権利者が賠償責任を負う前提を「不適切な申請」と規定している。このため、事件において申請が不適切であるか否か、および主観的な過失が生じた時点を考慮しなければならないという見解がある。また、差押えされた貨物が税関や法院で権利侵害と認定されるか否かが重要なのであり、認定されないのであれば、それは不適切な申請にあたるという見解もある。このような司法実務における見解の違いを考慮し、本件弁護士は原告に対し、次のように主張を多層的に進めることを提案した。

  第一段階:商標権侵害がないことが確認される限り、原告の損害賠償請求は支持されるべきであると主張する。

  第二段階:被告の商標権取得は正当とは言いがたく、税関の差押え申請は当初から不適切な申請を構成すると主張する。

  その主な理由は、現行の《知的財産権税関保護条例》第28条がすでに賠償の条件として「税関が、権利侵害被疑貨物が知的財産権者の知的財産権を侵害すると認定できない、又は人民法院が、知的財産権者の知的財産権を侵害しないと判断する場合」としているためである。1995年版の条例における「保護措置を講じることが不適切である場合」は廃止された。しかも、被告はチリの会社の商標を明らかに知っており、その商標登録後に、チリの会社が加工を委託した輸出貨物に対し税関の差押えを申請したことは、当初から不適切である。

  事件の結果

  本件一審の審理過程において、法院が調整を行い、原告と被告との間で調停が成立した。被告は、原告が製造してチリに輸出する照明器具に国外の加工委託者の商標を使用することが、被告の登録商標の専用権を侵害しないことを確認し、かつ原告に対し一定の和解金を支払った。

  本件原告のもう一つの訴えは、今後の海外OEM貨物が差し押さえられることなく、正常にチリの会社に輸出されることを望むものであった。交渉の結果、被告は、調停合意に加え、原告に授権書1部を交付し、原告がチリの会社に輸出し、かつ輸入国と到着国がいずれもチリである商品およびその外装または容器、取引書類、輸出税関資料には、単独で、または組み合わせて関連商標を表示する権利を有することを確認した。

 

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