事件の概要:
亨吉利世界名表中心(亨吉利世界高級腕時計センター)は、世界の高級腕時計の代理販売およびサービスを専門とするチェーングループ(以下、「亨吉利グループ」)で、中国の60以上の省・市に250店舗以上のチェーン店を構え、第35類「広告、販売促進(他人のため)」などの役務において長年にわたり商標「 」、「 」(以下、「係争商標」)を宣伝に使用している。2020年、係争商標は某企業から「3年不使用」を理由に取消審判が請求された。国家知識産権局は裁定において、本件で用いた証拠では係争商標が「他人のための販売、および商業展示会または広告展示会の企画・運営」などの役務において商業的に使用されていたことは証明できないとして、当該役務における登録を取り消した。
集佳の訴訟チームは本件の代理人となった後、国家知識産権局の手続段階でのすべての証拠資料を整理、精査し、「他人のための販売、および商業展示会または広告展示会の企画・運営」などの役務を正確に把握するとともに、北京知識産権法院に3年にわたる商標的使用の証拠を提示して論証し、審決取消の判決を勝ち取り、係争商標の「販売促進(他人のため)」「商業展示会または広告展示会の企画・運営」および類似の役務における登録維持に成功した。
本件の第35類「販売促進(他人のため)」役務に関する背景
2004年、当時の工商行政管理総局商標局は商標申字[2004]第171号回答で、次のように述べている。デパート、スーパーマーケットは商品を販売する企業に属し、その主な活動は卸売、小売である。したがって「標章の登録のための商品・サービスの国際分類」第35類の役務に「商品の卸売、小売」は含まれず、デパート、スーパーマーケットの役務は第35類の内容に該当しない。第35類の「販売促進(他人のため)」役務の内容は、他人の商品販売(サービス)のために助言、企画、宣伝、コンサルティングなどのサービスを提供することである。
この回答によって、第35類「販売促進(他人のため)」役務について、一部の関係者の間で異なる解釈が生じた。そのため、北京市高級人民法院は2019年4月に《商標の権利付与・権利確定に係る行政事件の審理ガイドライン》を発表し、第35類「販売促進(他人のため)」役務における商標使用の認定規則を明確化し、2022年12月には国家知識産権局が《第35類役務における商標の登録出願と使用に関する手引き》を発表した。
典型事例の意義
北京商標協会が2022年7月に発表した「商品小売業役務における商標保護に関する研究報告書」の統計データによると、「小売企業の第35類役務における商標3年不使用による取消事例」のうち、「商標登録を維持した比率はわずか7%」である。奇しくも本件は第35類「販売促進(他人のため)」役務が争点であり、今後の商標的使用の認定に生々しい事例を提供することとなった。