NFTデジタル作品「ワクチンを打つデブトラ」の権利侵害事件

2024-02-23

 基本的状況

 深セン奇策迭出文化創意有限公司(以下、「奇策公司」という)は、漫画家馬千里氏から作品「デブトラではない」シリーズの独占的著作権使用許諾を得た。奇策公司は、杭州原与宙科技有限公司(以下、「原与宙公司」という)が運営するプラットフォームで、NFTデジタル作品「ワクチンを打つデブトラ」を公開しているユーザーを見つけた。当該作品は馬千里氏が微博(ウェイボー)に投稿したイラスト作品と全く同じであり、透かしまである。奇策公司は、自社の情報ネットワーク伝達権を原与宙公司が侵害したとして杭州インターネット法院に提訴した。一審法院は、NFTデジタル作品の取引は情報ネットワーク伝達行為の特徴に適合するものであり、取引形態、技術的特徴、プラットフォームの管理能力、営利モデルなどを考慮し、当該プラットフォームは効果的な知的財産権審査メカニズムを構築すべきであると判断し、原与宙公司の権利侵害は成立すると認定した。原与宙公司はこの認定を不服とし、控訴を提起した。浙江省杭州市中級人民法院の二審は、次のように判決した。NFTデジタル作品の出品・投稿段階は情報ネットワーク伝達行為に関わり、デジタルコレクションのひとつの形態として、NFTデジタル作品に使用される技術は、その後の流通で複製が繰り返されるリスクを効果的に回避することが可能である。NFTデジタル作品取引ネットワークサービスに伴う相応の財産的権益の創出、移転、および起こり得る権利侵害の結果などの要因に基づき、この類のサービス提供者はNFTデジタル作品の出所の合法性を審査し、NFTデジタル作品の鋳造者が相応の権利を有するかを確認すべきである。本件において、原与宙公司は相応の注意義務を怠っており、よって控訴を棄却し、原判決を維持する。

 典型事例の意義

 本件はNFTデジタル作品の取引プラットフォームの責任をめぐる典型事例である。本判決は、ブロックチェーンを基盤技術とするNFTデジタル作品の法的属性、取引形態における行為の定義、取引プラットフォームの属性および責任認定などを積極的に探究しており、公開性、透明性、信頼性、追跡可能性のチェーン上にあるデジタル作品の新たなエコロジーを構築し、デジタル産業を促進していくうえで示唆に富むものである。

 (事例出典:中華人民共和国最高人民法院)

 

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